エルダー2019年11月号
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2019.1114②処遇(賃金)と人事評価制度賃金は、50歳までは毎年ベースアップするように設計されており、勤続年数に応じて上昇する。再雇用者は定年時の賃金を考慮し、フルタイムで働く人は現役時代から下がらないよう配慮されているため、モチベーションが維持されている。また、人事評価制度では、年齢や性別にかかわらず従業員の仕事ぶりを評価しており、2019年4月からは、評価基準を時代に合ったものに一新した。具体的には、部署内の業務および必要なスキルについて、従業員のスキルレベルを業務ごとに記載し、総合スキルを可視化したスキルマップと、人事考課表の2種類の改定を行い、新制度の対象は60歳以上の高齢従業員も含む正規従業員全員とした。③柔軟な勤務形態の運用・短時間勤務、短日勤務家庭の事情や、通院が必要な従業員のため、短時間勤務や短日勤務などの柔軟な働き方が可能な制度を構築している。原則、本人の希望に沿った形で勤務日などを決定し、不在となる期間については、従業員同士が計画的にフォローを行う。一例としては、他社を定年退職後、同社に再就職した65歳の再雇用者の場合、前職での人脈が豊富で他社とのパイプ役として大いに活躍しているが、持病があるため短日勤務で通院と仕事を両立させている。また60歳の従業員が、小学生の孫の世話をするために短時間勤務を利用し、家庭と仕事を両立して働いている例もあり、従業員一人ひとりの事情を汲くんだ働き方が生み出されている。・テレワーク制度1993年には、時代に先駆けて在宅勤務によるテレワーク制度を導入した。これは自宅から会社のネットワークにアクセスし、日報により業務内容を把握するもので、導入のきっかけとなったのは、結婚によって同社から車で2時間を超える地域へ転居を余儀なくされた女性従業員の存在であった。この従業員は、同社の創業期から製品のマニュアル作成を手がけていたが、業務の知識や文章能力の高さは余人をもって代えがたい存在であり、61歳になる現在まで26年間に渡り、テレワーク制度を活用、現在も戦力として活躍している。その後も在宅勤務は、さまざまな家庭の事情を抱えた従業員の勤続を支えてきた。在宅勤務から通勤に戻った従業員もおり、個々の希望に合わせて柔軟に運用している。(2)高齢従業員を戦力化するための工夫 ・社内システムの担当者を任命社内システムについては、初期設定やエラー時の対応などは、システムに詳しい人があたっていたが、担当者の不在時には解決がむずかしくなるほか、担当者自身も、本来の業務が頻繁に中断されるという弊害があった。また、高齢従業員の場合、業務自体は熟知しているにもかかわらず、新しいソフトウェアのインストールや初期設定がスムーズにできないことによって、作業の入口の段階でつまずいてしまう人が多く見られたことから、従業員のなかから、各フロアに社内システム担当者を任命し「セキュリティチーム」を発足。メンバーが業務のかたわら、社内システムに関するサポート・問合せ窓口となり、役割を明確にした。これにより、トラブルの解決がスムーズとなり、高齢従業員が本来の業務に集中できるようになったことで、組織全体の業務の効率化につながった。・中高年従業員の新規採用他社の早期退職者や、定年退職者を積極的に新規採用している。中途採用者は採用時点で豊富な人脈を持っており、総務や営業などでコネクションを活かして活躍し、管理職になった例もある。(3)意識・風土の改善・屋上を利用した菜園づくり喫煙所としてのみ使われていた屋上の有効活用と、コミュニケーション円滑化のための取組みとして、数年前から屋上を利用した菜園づくりに着手。トマト、ナスなどを栽培している。菜園は若手従業員が当番制で手入れをし、家庭菜園の経験豊富な65歳の本社管理部門の従業員が、収穫の時期などをアドバイス。日常業務から離れた共同作業をすることで若手従業員と高

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