エルダー2019年11月号
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特集エルダー172019年度 高年齢者雇用開発コンテストⅡアで、安心と潤いある生活を送ることができるように」、という思いが込められている。2015年には建物を新設し、有料老人ホーム事業をスタートさせた。現在、本業であった織物業は外注に切り替えている。介護の仕事に関心があった大蔵富宏社長は、大学卒業後の10年間、ほかの介護施設で働いていたという。しかし、身体拘束をともなう従来の介護スタイルに違和感を覚え、自身の考えるスタイルでの介護施設運営を開始すべく、祖父の代から営んでいた織物業の工場用地で介護事業に着手した。住民360人程度の地域は、高齢化が進んでいるにもかかわらず、地区内に介護施設がなく、高齢者がサービスを利用するためには遠方へ出かけるか、地域を離れなければならない状況であり、それを解消したいという思いから出発した挑戦であった。当初は現社長とその母、看護師や織物業時代からの職員などの少人数でデイサービスから始め、実績を積んだ後、有料老人ホームを開設した。高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方Ⅲ現在、全職員40人のうち、60代は13人(男性3人、女性10人)、70代が2人(女性のみ)となっており、60歳以上が37・5%を占めている。平均年齢はスタッフ全体ではおよそ40歳、パートタイマーの平均は50歳以上になる。職種内訳は、ドライバー3人、厨房5人、清掃2人、事務員2人、看護師4人、リハビリ担当3人、統括部長、看護主任、リハビリ主任、そして介護スタッフ(18人)である。ただし看護師・リハビリスタッフも介護業務を行うなど、必要に応じて職種を越えて働いている。採用については、学校を通じたインターンシップや求人により応募してくる若者もおり、将来の事業として、空き家を活用した高齢者と若者のシェアハウスや、農業に従事する高齢者を若者が見守る仕組みなどを構想している。若手職員が安く住めるような社宅の建設を計画しており、福井大学や県立病院の介護職に興味のある若者に働きかけている。一方、高齢職員の活躍の場を創出するために設備投資に注力しており、利用者の機能回復を、高齢職員を含めた全職員が安全で効率的に進められるよう環境整備に努めている。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善・定年延長、継続雇用制度の改善2014年に、定年を60歳から65歳に延長した。前身の細幅織物業時代は、定年は60歳、以後はパートタイマーに移行するという形を維持してきたが、2014年当時、すでに60歳を超えた職員が多く、今後高齢者に働き続けてもらうのは自明であったため、65歳定年の導入にふみ切った。また、定年到達後は希望者全員70歳までの雇用を明文化した。・人事評価制度週に20時間以上働く職員全員を人事考課の対象としており、時給や賞与にその結果が反映される。また、以前は一般的な企業の評価表に基づく人事評価も試行していたが、評価者によって評価点がばらつくため、人事評価の見直しを図った。当機構の高年齢者雇用アドバイザーの助言を得て、厚生労働省の「職業能力評価基準」を参考にした評価表をもとに、社内の主任会議高齢者のデイサービス事業所「笑楽日」

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