エルダー2019年11月号
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特集エルダー212019年度 高年齢者雇用開発コンテストⅡ企業の沿革・事業内容Ⅱ創業者である田中文子氏の「高齢者がやりがいを持って生涯現役で働き、障害者も生きがいを持って自立できるよう働ける職場をつくりたい」という思いが設立のきっかけとなっており、そのためにいち早く「農福連携」に注目。2009年に障害者福祉サービス事業所として創業し、2010年には就労継続支援A型事業所「ひなたぼっこ園」を設立し、シイタケ栽培をスタートさせた。事業は「高齢従業員+次代のにない手である若手従業員+施設利用者の障害者」でチームを編成し、従業員全員が平等な立場で作業を行うという体制をとっている。若手従業員と人生経験豊富な高齢従業員が支援員という指導役の立場として、チームを支えている。2017年には農林水産省の「農山漁村振興交付金(農福連携対策)」を活用し、加工施設を整備。近隣の耕作放棄地で野菜(ニンニクなど)の生産を開始している。現在、精神・知的・身体障害者26人が同社の施設を利用している。同社における農業の特徴は、あえて機械化をせず、支援員と施設利用者の障害者が手作業で行っており、これにより雇用が確保されていること。また、施設外就労(支援員1人、利用者5人)として、近隣スーパーから野菜の袋詰めなどを依頼されており、地域に密着した事業を展開している。2012年には、障害者がともに生活するグループホーム「おひさまハウス」を開設。就労継続支援A型事業所の利用者を中心に、家庭での生活がむずかしい障害者に対して、生活の場や食事の提供を行っている。さらに2013年には相談支援センター「さんさん」を開設し、同施設を利用する障害者のご家族の相談業務を行っている。センターには就職や今後の生活についての不安など多くの相談が寄せられている。高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方Ⅲ創業当初から、リタイア後の高齢者の経験や技術・技能を活用すべく、ハローワークからの紹介を受けて、60歳以上の高齢者を積極的に雇用し、現在(2019年4月1日時点)、全従業員中、高齢者の割合は28%を占めている。一方、従業員の高齢化や、体力が必要な仕事もあることから、2年前より若年者の採用も始めている。障害者とともに働くということは、人間性や経験が求められる業務ともいえるが、高齢従業員にとっては、これまでつちかったスキルや経験を活かしながらも、身体的な負担が少なく、長期間の就労が可能な職場となっている。「ひなたぼっこ園」では、高齢従業員7人(最高年齢70歳)と若手従業員が支援員として施設利用者の障害者とともにチームを組んで農作業を進めている。設立当初から同社の事業に参加しており農作業を熟知している利用者が多く、広々とした作業環境のなかでチームワークを発揮している。支援員の主な仕事は、シフト調整や作業指導、在庫管理、日報報告などで、障害者の作業を見守ることに重点がおかれており、障害者への支援や農業の経験がない高齢者でも就労が可能であることが、新たな雇用に結びついている。一方、グループホーム「おひさまハウス」では、高齢従業員3人(最高年齢71歳)の女性がグループホームの支援員として勤務している。また、相談支援センター「さんさん」では、60代1人が支援員として勤務している。同社で働く高齢従業員の共通点は、リタイアひなたぼっこ園入口の看板

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