エルダー2019年11月号
24/68

2019.1122後も何らかの形で社会に貢献したいという考え方を持っていることで、障害者のみならず、若手従業員からも大いに頼りにされており、同社にとって欠かすことのできない人材となっている。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善・定年制度設立時より定年は65歳で、就業規則により希望者全員を70歳まで雇用している。70歳以降も本人の希望に応じて勤務日数を調整し、継続雇用している。・処遇定年後は非正規従業員となるが、正規従業員と非正規従業員の違いは、正規従業員が無期雇用であるのに対し、非正規従業員は1年ごとの更新という点のみであり、給与などの処遇においての差は設けていない。・勤務時間など高齢従業員の希望を取り入れ、勤務時間を7~16時としたことで、通勤ラッシュの回避や朝と午後の商品出荷をスムーズに行うことができるようになった。また、早朝からの勤務で退社時間が早いため、夕方の時間を通院などにあてられるという利点もある。地域活動に取り組んでいる高齢従業員も多く、勤務時間の変更によってプライベートの面での充実につながると好評である。勤務日は週5日としているが、若手従業員が敬遠する土日勤務についても、高齢従業員が快く勤務に応じてくれるため、シフト調整がしやすくなっている。また、時間単位での有給休暇取得も可能となり、柔軟な働き方が従業員の就労意欲向上につながっている。・目標管理従業員に仕事に関する責任感の向上や売上げを意識させるため、目標管理を行っている。年1回、従業員自らが生産量・売上目標を定め社長に提出し、目標を達成した場合は、成果が賞与(年2回)に反映される。一人ひとりが仕事を任せられたことで責任感がめばえ、売上げを意識し始めたことが収益の向上につながった。(2)高齢従業員を戦力化するための工夫 ・作業場の設置高齢従業員は、これまで福祉施設で働いた経験のない人が大半ではあるが、それぞれが長年つちかってきたノウハウや経験が、現場で大いに役立っている。例えば、同社の主力商品であるニンニクを熟成させるためには、熟成庫が必要であるが、前職で電気関係の業務にたずさわっていた支援員のAさんが指導役を買って出て、従業員の総力で黒ニンニクの熟成庫設置工事を実施した。作業通路や作業場所、屋根の補修など、随所にAさんの経験が活かされている。・農福連携による高齢者と障害者の協働就労継続支援A型事業所「ひなたぼっこ園」は、福祉分野と農業分野が連携した「農福連携」の取組みにより、障害者雇用や、就職に向けてのトレーニングの場だけでなく、高齢者の生きがいの場として運営されている。障害者の就労支援は、ともすれば作業そのものが重要視され、作業効率の向上が求められることが多いが、同社では人生経験が豊富な高齢従業員を支援員として活用し、障害者が自主的に業務ができるような体制づくりに取り組んできた。支援員が一緒に作業しながら障害者の仕事を見守り、反復練習をうながし障害者が自主的にできるまで見守るといった体制を構築することで、すべての従業員のモチベーションが向上している。高齢従業員Aさんが製作した、黒ニンニクの熟成庫

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る