エルダー2019年11月号
25/68

特集エルダー232019年度 高年齢者雇用開発コンテストⅡ(3)意識・風土の改善・コミュ二ケーションの推進各自がどのように仕事を進めればよいのかを考える姿勢や、助け合い、相手を思いやる心を大切にしている。このため、人生経験の豊富な高齢従業員は若手従業員・施設利用者からの相談を受けることも多く、社内のコミュニケーションを円滑に行うため欠かせない存在となっている。社長に対しても従業員が日常的に何でも報告・相談できる信頼関係が築かれており、日帰りの社員旅行、バーベキュー、忘年会などの実施により従業員同士の連帯感が強まっている。・地域貢献時間にゆとりができたときには、従業員全員で地域の草取りを手伝うなど、地域との関係を大切にしている。従業員一人ひとりに仕事が任され、自主的に働ける環境になったことで、地域の人たちに働きぶりが評価され、交流も深まった。地域住民による耕作放棄地の提供や商品の購入など関係も密になっており、また、近隣の高齢者を雇用する場としても地域から歓迎されている。(4)能力開発に関する改善自発的に仕事を進める姿勢を大切にしており、高齢従業員には特別な研修は実施せずとも、自発的に業務上必要な知識を得る風土が醸成され、若手従業員のよい手本となっている。そのようななかで、現地視察による研修、近隣農家との勉強会、現地で専門家の指導を受けることで問題点が浮き彫りになり、その解決への努力が収益増につながった。近隣農家とは地域作物による新商品の開発についてなど、活発な意見交換を行っている。(5)健康管理・安全衛生日常的な観察により、健康状態の確認を行っている。また、有給休暇は時間単位での取得を可能としているため、通院が必要になった場合などに活用でき、働き方の柔軟性が高まっている。また、機械化に頼らず手作業を多くしていることで、高齢者が苦手なパソコンや機械操作などの作業が不要となり、ストレスの軽減に役立っている。(6)高齢従業員の声Aさん(70歳・男性)は、ニンニクの生産や黒ニンニクの加工などの業務に従事している。前職の技術を活かして加工機械などを製作、その技術を若手従業員に伝えている。Bさん(65歳・男性)は野菜生産や集荷の業務を担当している。障害者に対する温かくていねいな指導ぶりには、定評がある。全体の3割弱を占める高齢従業員からは、自分のペースや体調により、勤務日・時間が選択でき、働くことで地域社会につながっている意識を持つことができるため、安心して長く働き続けられるとの声が上がっている。(7)今後の展望仕事を求めている高齢者や障害者がもっと活躍できる場を増やすために、事業所の拡充を視野に置いている。外に向かっての発信が重要であり、地域住民、農業従事者、大学や商工会などと連携して、地域の宝を発掘・商品化し、雇用拡大のためのプロジェクトを立ち上げた。今後も「農業」を核に、時代が求めている高齢者雇用の推進と障害者の就労支援が両立できる職場として、さらなる充実を目ざす。農場の除草作業をするAさん作業場の通路。高齢従業員が屋根の製作・修繕を行っている

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る