エルダー2019年11月号
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2019.1130用後は個別決定とする」と就業規則に定めた。運用により上限なく再雇用としていたものが、就業規則に規定されたことにより、安心して働く環境が整備された。なお、現在の最高年齢者である76歳の正規従業員は、創業当時から在籍しており、同社における生き字引的存在であることから、本人の希望があるかぎりは雇用を継続していく方針である。また、定年後は本人と面談し、本人の希望を取り入れた短時間勤務も可能とした。定年の延長や柔軟な勤務形態の整備により、高齢者のみならず全従業員のなかに「生涯現役」の意識が生まれ、就労意欲の向上につながっている。(2)高齢従業員を戦力化するための工夫①「職場改善ワークショップ」の開催昨年から遊覧船の冬季休業期間を利用し、高齢者が「安心して働け・働きやすく・心地よく働ける職場」を目ざして、全従業員を対象とした「職場改善ワークショップ」を開催している。目的は、職場の現状把握と問題点の洗い出しを行うことによる就業意識の向上、職場環境の改善である。ワークショップで、会社の経営理念や求める人材、あるいは月間目標などが明確化されたことにより、従業員の意識が変化し、課題であったコミュニケーション不足を解消させることにつながった。②「職場改善アワード(企業内表彰)」の実施2019年2月から職場の活性化・共通目標の共有と促進を目的に、従業員のアイデアを募集する「職場改善アワード」を実施した。賞金を設定したこともあり、多くの応募が集まって、「未来が拓ひらけた賞(国内旅行業務取扱管理資格取得)」、「接客大賞(船内等でのお客様案内)」などの賞を授与した。結果、従業員の職場改善に対する意識が大きく向上した。③高齢従業員と若手従業員のペア就労知識・経験が豊富な高齢従業員は、マニュアル重視の若手従業員にとって、働くうえでの見本となっている。高齢従業員と若年従業員のコラボレーションによって、斬新なアイデアが生まれ、業務の効率化につながった。・「イカ干し作業」を協働により実施これまでイカの一夜干し商品の加工作業は高齢従業員がすべて行ってきたが、若手従業員からの申し出により、高齢従業員と若手従業員が協働して行う作業に変更した。イカの値づけは価格の判断がむずかしく、高齢従業員の経験により決めているが、イカ干し作業を協働にて行うことにより、高齢従業員からイカの加工・値づけなどのノウハウを得る効果をもたらしている。④職場改善の実施社内研修やワークショップにおいて、店内の「動線」を見直したところ、厨房における動線に無駄が多いことが明らかになった。そこで、レジを厨房内に入れ移動距離を短くするとともに、食器を作業台の下などに収納することで動く距離が短縮され、身体的負担の軽減につながった。また、動線の見直しによって「イカ焼き」と「焼き物」の複合業務が可能となり、全体の作業時間の短縮を実現した。一方、高齢従業員のスキルを活かしてメニューカルテ(作業手順書・原価計算書)を作成、作業の均一化が可能になり、コスト改善意識の向上にも役立った。高齢従業員と若手従業員が協働するイカ干し作業

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