エルダー2019年11月号
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2019.1134も精神的にも余裕が生まれ、周りに対しての配慮など介護サービスにとってもプラスに作用している。・賃金と柔軟な勤務形態定年後も賃金の減額はなく、かつ年齢に関係なく技術水準に応じた賃金体系に変更した。正当性・公平性を持った評価制度を示すことにより、いつまでも年齢に関係ない処遇を得ることができ、職員同士がお互いを尊重しあう職場環境の構築が実現した。また、高齢者が働きやすい職場環境の構築を目ざして、自分の生活パターンに合った出勤日数や勤務時間の選択を可能とし、柔軟な雇用形態を導入した。これにより職員各々の生活状況に合わせた勤務スケジュールを組むことができ、職員が遠慮したり無理せずに、仕事に向かえるなど余裕ができるようになった。高齢職員にとっても、体調に合わせた労働時間の設定が可能となったことから、日々の作業にも精神的な余裕が生まれ、サービス向上に一層注力でき、単純なミスも減少した。さらに、突発的なことに対しても、交代勤務・増員体制などの変則対応が柔軟にできるようになり、職員が休暇を取得しやすくなった。(2)高齢職員を戦力化するための工夫 ・生産性向上施設の利用者は高齢者が多いことから、積極的に高齢職員を介護担当として活用することで、利用者に寄り添った介護を行うことができるようになった。例えば、高齢職員を送迎担当に配置することにより、利用者の目線に立ち、乗車や下車時に細心の注意を払うといった、質の高いサービスの提供が実現している。高齢職員の活用は利用者だけでなく、若年・中高年職員の意識向上にも役立っており、机上のセミナーなどで学ぶことと違い、高齢職員の経験から生まれた知恵を、身近で見聞きできることで、若手職員たちのモチベーションがアップし、その結果、全体の生産性向上につながっている。・安全衛生管理における高齢者の知恵の活用同社では入所者が居住スペースで快適に過ごせるよう、好天の日には、職員同士が声をかけ合って布団を天日干しすることを励行している。発案したのは高齢職員だが、入居者全員の布団を干すためには大変な労力を要することから、若手職員が率先して行っている。布団の天日干しは入居者に快適さを提供するだけでなく、インフルエンザの発症がまったくなくなるという副次的効果もあった。また、高齢職員の提案により厨房部門は終業時、毎日、床面や水周りに熱湯をまき、消毒を行うことを徹底しているが、これが食中毒発生の防止につながっている。(3)意識・風土の改善・「なぁなぁの日」の創設福利厚生の一環として、毎月7のつく日(7・17・27日)を「なぁなぁの日」と称し、就業後に食事会を兼ねた職員の交流の場を設けている。会場のカラオケ店には職員はもちろん、経営者や幹部職員も参加し、遠慮のない意見交換をすることで、職場における問題抽出のための「なぁなぁの日」の案内ポスター(左)と当日の様子(右)

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