エルダー2019年11月号
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高齢者に聞くエルダー39持たなければと、安全に関する講演会があると聞けば自費で大阪や東京へ出かけました。リスク分析手法により、事故後10年間の課長時代には1件も労働災害を出さなかったことを、いまも誇りに思っています。興亜石油株式会社は2002年に統合によって新会社となり、その後も変遷を経て現在に至る。円滑な事業展開のために改革プロジェクトが発足、杉村さんは定年まで参画し、啓蒙活動のため全国を飛び回った。次代のにない手たちに伝えたいこと人生一寸先はわからないというのは本当で、59歳のとき、がんを患いました。ステージ3を宣告され、2年間の闘病生活の後、職場復帰が叶いましたが、大病は人生観を変えました。60歳で定年を迎えた後、高圧ガス保安協会や日本ボイラ協会などで安全に関する講演活動をしていましたが、これまでの実績を活かしてさらに社会貢献ができないかと模索していた折、建設業界に特化した技術者派遣・受託事業を展開している共同エンジニアリング株式会社に声をかけていただきました。とりわけ、人材不足解消のため、未経験の中途採用者や新卒社員を技術者として育成することに注力していることを知り、自分がつちかってきた経験を次世代に継承できるのではないかと、61歳で入社しました。当初は若手幹部のマネジメント指導などを担当していましたが、2015年から、未経験者がプラントエンジニアを目ざす新入社員の研修が加わりました。数日間の新入社員研修では、「スキル」よりも「ウィル」ということを伝えています。ウィルとは「やる気」という意味ですが、同僚や職場を大切にする心を忘れず、協力して合議する姿勢だと私は解釈しています。現場にかかわる人間一人ひとりが、未然に事故を防ぐための知恵を出し合い、安全意識を高め合うことの大切さをくり返し話しています。私が一方的に話をするのではなく、チームで合議した結果を発表し合うスタイルで自発性を引き出しています。また、研修では技術論だけでなく、自身の健康管理やお金の管理、10年後の自分の未来を管理できる力を身につけてもらおうと、仕事とライフスタイルを考えた夢のある人生設計を指導しています。実は、私は25歳のころから日々の記録を大学ノートにつけています。ノートは3種類あり、1冊はスケジュール管理、もう1冊には仕事に関することはもちろん、日ごろ感じたことや感銘を受けた言葉など、あらゆる事柄を記します。その2冊からさらに重要なことをB4の大学ノートに書き写し、10日ごとに自分のやってきたことを振り返っています。いつの間にか300冊近くになった大学ノートは、私の大切な財産です。読み返せば頭が整理でき、伝えたいことを喚起してくれるので、研修のときに大いに役立っています。生涯現役で社会に貢献を未経験の中途採用者や新入社員の研修は4年目を迎えました。当初は2カ月に一度、私が住んでいる岩国市に近い広島支店で実施していましたが、現在は月に一度、私が東京へ出向いています。現在25期生になりますが、研修が終わってもSNSでつながり、いつでも相談にのれるようにしています。私が講義した若手エンジニアの離職率が低いとの話を聞き、少しはお役に立てているのかと嬉しくてなりません。私たちを取り巻くリスクは時代とともに変わっていきます。私自身もさらに勉強する必要があり、時間があれば地元の図書館に通っています。これからの業界をになう人たちに、私が知っていることすべてを伝えていくためにも、健康で長く働き続けたいと思います。岩国市は自然も豊かで、日々のウォーキングや、ときにはキャンピングカーで中国山地のキャンプ場をめぐって気分転換を図っていますが、研修で出会う若い彼らからもらうパワーこそが私の元気の源かもしれません。まだ見ぬ若い人たちとの出会いに胸を弾ませながら、生涯現役を目ざします。

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