エルダー2019年11月号
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̶高齢者から始まる働き方改革̶で働き方が変わるエルダー4580歳くらいまで働きたい」を含めると、仕事をしているシニアのうち79・7%が働き続けることを望んでいます。私が高齢者就労の研究を始めた当初、東京大学高齢社会総合研究機構が千葉県柏市在住の60歳以上の高齢者を対象に開催した「就労セミナー」において、実際の定年退職後の就労に関するモチベーションを調査する機会を得ました。その結果から、シニアは収入を得られることよりも、健康維持、達成感、新しい人と知り合いになれること、自己成長や世の中への貢献を重視していることがわかりました(図表2)。このように定年退職後のシニアの就労意識は多種多様であるため、それぞれのニーズに合った形で仕事とつなぐ必要があることがわかります。そのためには、一人ひとりが仕事を探すにあたって大事にしていることを引き出し、それに見合った仕事を探し出す必要があります。これは手間を要する作業であり、現役世代を対象とした画一的なジョブマッチングのシステムでは対応がむずかしい問題です。健康が維持できることを特に重視しているシニアが多く、実際に就労をはじめとする社会とのつながりのある活動に参加することは、高齢期における健康維持に寄与するものになっています。東京大学高齢社会総合研究機構ではフレイル※3リスクと身体活動、文化活動、地域活動との関係の調査分析を行っています。5万人近くのデータ分析結果から、ジムでのトレーニングや散歩など個人で行う要素が強い身体活動に取り組んでいなくても、ボランティアなどの地域活動や文化活動など社会とのつながりのなかで行われる活動に参加している集団の方が、フレイルリスクが低いという結果が得られています※4。就労することは、社会とのつながりという意味では、ボランティアと比較して責任の重い部※3 フレイル……加齢により心身が老い衰えた状態※4  吉澤裕世、田中友規、高橋 競、藤崎万裕、飯島勝矢「地域在住高齢者における身体・文化・地域活動の重複実施とフレイルとの関係」日本公衆衛生雑誌、2019・66巻・6号・p.306-31601002003004005006007008009001,00010410210098969492908886848280787674727068666462605856545250484644424038363432302826242220181614121086420男性女性01002003004005006007008009001,000(千人)年齢重要でないあまり重要でないふつうやや重要とても重要020406080100(%)あなたが働くとしたら、次にあげる理由はどのくらい重要ですか。自分が成長できること達成感が得られること周りの人から認められたり、評価されること収入が得られること世の中に貢献できること働く仲間に貢献できること働いている会社などの組織に貢献できること健康が維持できること新しい人と知り合いになれること出典:国立社会保障・人口問題研究所「出生中位(死亡中位)推計(平成29年度推計)」より作成出典: 檜山敦『超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方改革』(平凡社)図表1  逆転させた人口ピラミッド(2025年の日本の人口)図表2  柏市での就労意識調査

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