エルダー2019年11月号
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̶高齢者から始まる働き方改革̶で働き方が変わるエルダー47いこなせるかもしれませんが、人口が最も多い現在のシニアの社会参加と健康寿命の延伸が世の中にとっては大きな効用だと考えます。そのためにも全国各地のシニア向けIT教室と連携したサービスの普及促進のモデルづくりにも着手しました。社会貢献・地域貢献にシニア人材の力を活かす企業内のホワイトカラーの仕事の開拓も課題ですが、地域コミュニティの活性化・再生へ向けて新しい仕事が地域で創出されていく可能性もあります。すでに高齢化率が30~40%を超えて将来の日本の姿を先行して見せているニュータウンや、人間ならぬ施設の老朽化に対応した大規模再開発などが進む地域などで少子高齢社会に対応した地域づくりが考えられ始めています。特に若い人材が都会に流出しているような地域では、ICTを活用したサービスの展開は必要不可欠な状態にあります。インフラなどのハードウェアレベルでのコミュニティ機能の設計に加えて、サービスなどのソフトウェアレベルでの機能設計が模索されています。地域住民同士の助け合いや、地域企業やサービスの活性化のために、そこを生活の拠点としているシニア人材に期待が寄せられています。社会貢献、地域貢献という観点からやりがいを感じさせる仕事が開拓される可能性があります。すでに人材や求人を抱えている団体や企業に対しては、前述のGBERのようなサービスを比較的展開しやすいのですが、地域コミュニティの活性化に適用する場合はその地域を動かす、熱意のあるキーパーソンの存在が欠かせません。また、持続可能なサービスとして地域に定着させていくためには、人事手続きの簡略化や決済機能の導入など、小規模な店舗や個人が利用しやすい機能の充実が求められる要素としてあります。そのようなサービスを指向し、若い人たちの間で広がり始めているシェアリングエコノミー※5については第3回で解説していきます。加齢による心身機能の低下をカバーしシニア人材を活用するテレワークの未来5年後、10年後の未来ではインターネットはさらに高速化し、バーチャルリアリティ技術やロボット技術を駆使して、空間を超えて遠隔地からあたかもその場にいるような感覚でコミュニケーションを取れるようになりそうです。運動機能が衰えてなかなか外出ができなくなっても、諦めることなく社会とのつながりを維持できるようになりますし、好きな場所に旅行を続けながら遠隔地で仕事に従事することができるようになります。その際には、「人間拡張技術」と呼ばれる技術により、衰えた感覚や運動機能を補ほ綴ていするだけでなく、より高度化する形でロボットの身体やコンピュータグラフィックスで表現された自分の分身であるアバターの身体を通じて拡張できるようになるでしょう。そのためには遠隔地をリアルに体験できるだけの技術の成長はもちろん、手軽に利用できるようになることが求められます。未来のテレワーク※6の姿については連載の第4回で技術開発の動向を紹介していこうと思います。おわりに経験と知識が豊富で意欲的なシニア人材が活躍できる環境が整えば、一人ひとりのシニアの生きがいと健康増進だけでなく、地域コミュニティの活性化や若年層の働き方改革の促進を加速する意義があります。そのためにも、従来型の働き方と価値観の変換、馴染みのないICTスキルの習得などの課題を乗り越えようとする、シニア一人ひとりの挑戦を応援していく必要があるのです。※5 シェアリングエコノミー…… 物やサービスを共有・交換して利用する仕組みのこと。自動車を共有するカーシェアリングなどが代表。本企画では、高齢者個人が持つ知識や技能を活用した働き方の形を紹介する予定※6 テレワーク……インターネットを介して自宅やサテライトオフィスなどで働く、時間や場所の制約を受けない働き方

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