エルダー2019年11月号
5/68

エルダー3金として支払うことで納得してもらいました。月例給の50%であれば「高年齢雇用継続給付」※1の受給が可能ですが、75%になれば受け取れませんし、自分の取り分が増えるわけでもありません。むしろ退職金で受け取ったほうが退職所得控除を受けられます。―定年を延長するうえで、退職金の取扱いは検討課題の一つですね。佐藤 そうですね。定年延長者の退職金をいつ支給するかは、定年を延長するうえで一番のポイントでした。退職金を60歳で受け取ることを前提に人生設計を考えている社員もおり、65歳支給にすると、そのプランが変わることになります。一方で、従来通り60歳で支給すると、税制優遇を受けられるのか、という問題もありました。調べてみると、60歳で退職金を支給することを労働協約や就業規則に明記していれば、退職所得控除の対象になることが判例で確認でき、60歳時に退職一時金を支給することにしました。企業年金は確定拠出年金を導入しており、60歳で掛金拠出も終わります。―65歳定年制にともない、マインドセット※2などの施策を実施していますか。佐藤 定年延長と同時に56歳と59歳の社員に絞った、新たなキャリア研修をスタートさせました。60歳から65歳までどういう働き方をするのかを考えてもらうこと、そして、これまでの仕事や人生を振り返ってもらい、家庭生活も含めて今後の人生をどう設計するのかを、自身で考えてもらうことが目的です。59歳の研修ではこれに加えて年金などのお金の話もしています。 研修の場では、私からも毎回話をさせてもらっています。定年延長の背景について説明し、56歳であれば65歳まで9年間あること、ひょっとしたら9年後には70歳雇用になっているかもしれないことなどをふまえ、長く働き続けることを視野に入れて考えてほしいと伝えています。混乱も予想され現実的ではありませんでした。そこで、2017年度に定年を迎える世代を最後のSC社員とし、その一つ下の世代が実質的に65歳定年となるよう、1年ごとの段階的な定年延長としたのです。 しかし、定年延長により基本給が50%から75%に上がるわけですから、SC社員のなかに不公平感が生まれてしまうことは避けられません。この不公平感をなんとか解消することはできないかと、いろいろ検討した結果、65歳の退職時に、差額分の25%相当額を退職段階的な定年引上げを進めるうえで「退職金」が大きな検討課題に※1 高年齢雇用継続給付…… 高年齢者の就業意欲を維持・換起し、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的とする給付。60歳到達時に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の一般被保険者に支給される※2 マインドセット……物事を判断したり行動する際の基準となる考え方

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る