エルダー2019年11月号
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機会を与えられたとしても、選択の余地がないような状況に置かれている場合には、変更された労働条件に応じる以外の選択肢が実質的には存在しないことになるため、前職を退職した後に変更内容を示したり、生活に困窮している状況にある求職者である場合には、求人票通りの労働条件による労働契約が成立パワハラ防止に関する法律について1この度、法改正によりパワハラに関する法規制が実施されることになりましたので、改めて、新法の内容と、パワハラの具体的な例や責任を負担する当事者について、裁判例をする可能性は否定できません。求人票と異なる労働条件とならないように、変更時点で明示することに留意するとともに、やむを得ず、求人票と異なる労働条件で合意に至る場合には、その旨を明示したうえで、検討の機会を十分に与えることが必要でしょう。もとに整理してみたいと思います。パワハラの防止に関して定められたのは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下、「労働施策総合推進法」)の第30条の2です。パワハラの定義については、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定められました。優越的な関係を背景とするという点などは、上司から部下に対する権力的な行為にかぎらないという点が明らかにされており、一般的にイメージされるパワーハラスメントのみならず、いわゆる職場におけるいじめのような行為も含んでいます。また、かつては、「業務の適正な範囲を超えて」行われる行為か否かという基準であった点は、「業務上必要」かつ「相当」という定め方に変更され、適正な範囲よりも検討の要素が明確にされました。パワハラと人間関係の考慮について2パワーハラスメントについては、当事者同士の人間関係から、許容される場合もあるなどといわれることがあり、このことがパワーハラスメントの判断をむずかしくしていることがあります。それでは、実際の裁判例ではどうなっているのでしょうか。例えば、東京地裁平成27年9月25日判決においては、学内行事の企画について問い詰め、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正により、使用者に対するパワハラの防止義務が定められました。過去のパワハラの裁判例では、人間関係をふまえた判断が行われているケースや、業務上の必要性を肯定してパワハラを否定している事例もあります。A2019.1150パワハラの法規制について詳しく知りたい法改正によりパワーハラスメントについても法律で規制されるようになったようですが、どのような内容なのでしょうか。また、どのような行為がパワハラになるのか、人間関係が考慮されるというのは本当なのでしょうか。業務との関連性はどのように判断されるのでしょうか。Q2

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