エルダー2019年11月号
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エルダー53分解を促してエネルギーに変えるコエンザイムAの主材料で、必要不可欠の物質です。【多く含まれる食品】桜えび、ほうれん草など(4)L-カルニチンL-カルニチンは脂肪燃焼系アミノ酸です。脂肪酸がエネルギー工場のミトコンドリア膜に導入するために必要な物質です。ミトコンドリア膜は糖質や脂肪からエネルギーを産出する細胞小器官で、脂肪酸はそのままでは通過できず、L-カルニチンと結合して初めて通ることができます。【多く含まれる食品】ラム肉、かつお、赤貝など(5)クエン酸ヒトには身体を動かすためのエネルギーをつくるシステム(TCA回路)が備わっており、そこではエネルギーとなるATPがつくられています。この回路の動きをスムーズにして、効率よくエネルギーをつくりだす手助けをするのがクエン酸です。【多く含まれる食品】柑橘類(レモン、グレープフルーツなど)、食酢など(6)コエンザイムQ10(CoQ10)コエンザイムQ10は、ATPをつくる最終段階に必須の物質です。人の身体に含まれている補酵素ですが、加齢とともに産生能力が減少しますので、高齢者には不足がちで注意が必要です。これが不足するとエネルギーの産出に支障が出るため、食べ物から補うことが大切です。コエンザイムQ10は抗酸化作用も持ち、細胞膜の酸化を防ぎ、酸素の利用効率を高めます。【多く含まれる食品】牛乳、いわしなど(7)イミダゾールジペプチドイミダゾールジペプチドは、ヒトや動物の骨格筋にある二つのアミノ酸が結合したものです。渡り鳥が長時間、翼を休めずに飛び続けたり、遠洋回遊魚が長距離を泳ぐ原動力となっていることが知られており、強い抗酸化作用と疲労を軽減する効果が実証されています。【多く含まれる食品】鶏の胸肉、かつお、まぐろ、かじきまぐろ、くじらなど栄養はバランスよく!疲労の原因である活性酸素の害から身体を守るためには、前述した栄養素を十分に摂る必要があります。ただし、一つの栄養素だけ摂れば効果があるというものではありません。栄養素は単独で役割を果たすのではなく、それぞれがお互いに助け合ったり、影響し合ったりして、パワーを発揮するのです。一つの栄養素に限らず、疲労回復に有効な栄養素をいろいろと組み合わせて、バランスよく摂るようにするのがよいでしょう。また、身体の構成に欠かせない肉類や大豆などに含まれるタンパク質は、毎日、欠かさず摂るように心がけてください。代謝に不可欠な酵素や免疫の抗体なども、タンパク質が主たる材料になっているのです。そして、タンパク質はエネルギー源としても重要です。動物性と植物性のタンパク質をバランスよく摂ることが大切であることも覚えておきましょう。わたなべ・やすよし京都大学大学院医学研究科博士課程修了、大阪医科大学医学部・講師、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・センター長、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター・センター長、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター所長等を歴任し、現在は、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム・プログラムディレクター、理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター・顧問を兼任。日本疲労学会・理事長。図表 科学的に検証された抗疲労に効く栄養素ビタミンB1抗疲労クエン酸コエンザイムQ10(CoQ10)イミダゾールジペプチドα-リポ酸パントテン酸L-カルニチン出典:筆者作成

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