エルダー2019年11月号
65/68

エルダー63開店は朝9時。最初のお客さまが古典菓子「ソーシソン」を購入。100年前のルセット︵レシピ︶をよみがえらせたおすすめの一品で、名前はソーセージの形が由来だ。藤生さんがこだわっているのは本物のフランス菓子、フランスの文化だ。いわゆるショートケーキも、フジウでは「フレジェ」といい、生クリームが濃厚でコクのある本格的なフランス菓子である。そして、お客さまに伝わるよう、読みがなや説明書きは日本語で書かれている。栗が印象的な「モンブラン」も、由来である山の形を大事にする。焼きメレンゲを土台につくられた本場の味に、期待が膨らむ。正統なものをつくり、その価値や文化を味で伝えていく精神は、まさにフランスのエスプリだ。パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウhttp://chef-fujiu.com/index.html東京都日野市高幡₁₇–8TEL:042(591)0121(撮影・福田栄夫/聞き手・朝倉まつり)作業し、藤生さん直伝の技をしっかりと受け継ぐ。そして、5年目には新作を考えてもらう。これもフランス流でありフジウ流だ。「どこへ行っても何とかやっていける基礎を身につけさせます。そして、次の段階へ送り出します」それぞれの個性を見て教えることはしない。必要なことはだれでも同じという信念がある。「フランス菓子は材料の配合がきちんと書いてある。数字通りに計量することが製菓の基本です」開店前、準備で忙しくても、その基本は必ず守る。計量や確認ができていなければ、その場で注意が飛ぶ。数字も工程も、一つひとつすべてに意味があるのだという。フランス菓子の文化を大切に本物をわかってもらう工夫朝、藤生さんはスタッフと握手で挨拶する。それもフランス流だ。※2  著書『パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウの現代に甦るフランス古典菓子』は、料理分野の良書で知られる柴田書店が制作した。「ソーシソン・オ・パン・ヴリュ」などの古典菓子、「シトロン」をはじめとする定番菓子、「パート・ダマンド・フリュイ」など数々のコンフィズリーのルセットも掲載。アレンジ理由や工程も記載され、本格的なフランス伝統菓子を若手職人に伝える一冊であるきらびやかで甘いコンフィズリー(砂糖菓子)は元気のもと。著書には、製法やコツも掲載※2約100年前の菓子ソーシソン(左)。50年前の修業先ジャン・ミエ流のシトロン(右)。味も芸術品縁あって、高幡不動に店を開いて27年。赤いクルマは、藤生さんが店にいる目印焼き菓子も豊富。マルコナ・アーモンドと北海道産バターでつくるフィナンシェも味わい深いモンブランの絞り出し。先輩後輩の二人一組で作業するふちまでおいしいシトロンに仕上げる菓子職人の美しい手仕事

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る