エルダー2019年12月号
10/68

2019.128と一気に466万人(55・5%)まで高まり、その翌年には511万人(57・2%)と、500万人台の大台に乗りました※1。就業率が1年で2~3ポイント上昇するというのは、通常はないことです。 これはやはり、政策の進め方、特に労・使・学識者の三者構成の審議会の有効性を示すものだったと思います。65歳までの雇用延長をルール化することについては、当時、使用者側の抵抗もかなり強かったわけです。私などは、むしろ思い切って定年を延長すべきと申しましたが、労使学識経験者の話合いの結果、①定年を廃止する、②定年を延長する、③定年は60歳のまま何らかの形で継続雇用を行う、という三つの選択肢を認めたわけです。 日本の使用者は真面目ですので、三者がギリギリ、「これならなんとかできるだろう」、「理屈にも合うだろう」と約束したことについてはきちんと守ります。この結果を見ますと、研究者には中途半端に見えても、三者がよく話し合って約束をしたからこそこれだけの効果があったのだと思います。65歳までの雇用があたり前に定年延長企業も徐々に増加―2013年の改正では、企業に希望者全員65歳までの雇用が義務づけられました。2004年改正以降の雇用環境の変化や法改正のねらいなどを含め、高齢者の雇用に与えた影響についてご意見をお聞かせください。清家 一番大きな効果は、60代前半の雇用があたり前になったことです。これは、過去の例でいえば、1998年の60歳定年の法制化に匹敵する影響といえると思います。 しかし、残念ながら、定年を延長する企業は少数にとどまり、多くの企業は再雇用、あるいは継続雇用という形で雇用確保措置を講じました。 ただ、その後を見ますと、まず人材確保がむずかしくなってきた中小企業から定年延長が進み出し、大企業のなかでも、高齢者雇用に見識のある優良な企業が相次いで定年を65歳に延長するようになってきました。そしてとうとう昨年、人事院勧告に合わせて、国家公務員の定年を65歳に段階的に引き上げることを人事院が政府に求めました。私は、これはとてもよい傾向ととらえています。―早くから著書などで、先を見据えた提言をされてこられましたね。清家 私は、80年代から高齢者雇用の問題を研究してきました。著書としては、1990年の『高齢者の労働経済学』(日本経済新聞社)が最初で、その後、労働関係図書優秀賞をいただいた『高齢化社会の労働市場』(1993年・東洋経済新報社)、『生涯現役社会の条件』(1998年・中公新書)、山田篤裕氏と共著で日経・経済図書文化賞をいただいた『高齢者就業の経済学』(2004年・日本経済新聞社)を著しました。―企業としては、かつては、先生が提言され清家 篤氏※1 総務省「労働力調査」より

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る