エルダー2019年12月号
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2019.1212いることです。それは以下の七つです。①定年廃止②70歳までの定年延長③継続雇用制度導入(現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)④他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現⑤個人とのフリーランス契約(資金提供など企業が支援)⑥個人の起業支援(企業が支援)⑦個人の社会貢献活動への従事(資金提供など企業が支援)企業は労使で十分な話合いのうえで①~⑦のなかから採用する措置を提示し、個々の高齢者との相談を経て適用する(努力義務)ことになります。そして「選択肢の具体的検討にあたっては、各選択肢における企業が負う責務の程度など、企業の関与の具体的なあり方について今後慎重に検討する」とし、その検討が労政審に委ねられました。ただし①~③の従来の65歳までの雇用確保措置と④の他企業での再就職は、雇用関係にありますが、⑤~⑦の三つは非雇用であり、⑦はいわゆるボランティア活動です。個々の高齢者の能力・事情に応じた活躍を図るためにほかの選択肢を用意したものですが、実際に労使で話し合って決めるにしても⑤~⑦を含めた選択肢をどのような方法で決定し、また企業がどこまで責任を持ち、支援すべきなのか、現時点では不明確です。9月27日に開催された労政審の第一回目の審議でも「七つの選択肢のイメージだけでは、企業がどのような対応をすればよいか見えない」、「雇用ではない選択肢については、高齢者にさまざまな希望があるなかで、企業がすべて受け止めるのはむずかしい」という意見も出されました。こうした意見をふまえて10月25日に開催された二回目の審議で、厚労省事務局は七つの選択肢の「措置として事業主が実施する内容」について提起しています(「高齢者の雇用・就業機会の確保に関する主な検討課題」)。定年廃止、定年延長、継続雇用制度の導入については、「65歳までの雇用確保措置と同様の法制上の措置が考えられるのではないか」と述べています。次に④の「他の企業への再就職の実現」については「特殊関係事業主による継続雇用制度の導入と同様のものが考えられるのではないか」と述べています。特殊関係事業主とは、子会社や関連会社などのグループ企業のことであり、事業主と特殊関係事業主との間で引き続き雇用する契約を締結すればグループ企業での継続雇用が可能になる仕組みです。これを他企業への就職でも同じ契約を締結することで認めようというものです。個人とのフリーランス契約と個人の起業支援については「事業主からの業務委託により就業することが考えられるのではないか」とし、また「個人の社会貢献活動参加への資金提供」については「事業主が自らまたは他の団体等を通じて実施する事業による活動に従事することが考えられるのではないか」と提起しています。さらに厚労省の事務局は、業務委託に関しては70歳までの就業を意識して継続的に続けられること、社会貢献活動も事業主の適切な関与が重要である、と言及しています。66歳以上の就業について非雇用の選択肢を認めても、結果的に早期退職につながると70歳までの就業を達成できません。努力義務であっても事業主の履行確保を図るための行政措置の仕組みについても今後検討していく予定です。企業としては、法制化の動きをふまえつつ、65歳までの自社の雇用制度を再検証する必要があります。そのうえで60歳から70歳までの10年間を見据え、シニアのモチベーションを高め、いかに戦力化していくのか、具体的な制度設計の検討に早期に着手するべきでしょう。

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