エルダー2019年12月号
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2019.1214ていた課題についてうかがうと、平山課長は、「高齢の従業員は増加傾向にあり、雇用延長者は今後増加していくことが考えられ、定年の引上げにより人件費の増額が見込まれました。しかし定年引上げを見送るのではなく、長く働ける環境を整えることで社員の安心感を高め、就業意欲を向上させることが業績拡大の原動力になると判断し、実施しました」と振り返る。360度評価を全従業員に適用公平・公正な制度でやる気をアップ同社では、つちかった知識や能力を発揮してもらうため、雇用延長後の職場と仕事内容は、基本的に定年前と同じとしている。そうしたなかで、役職に就いていた人は役職定年の62歳から、監督職の一般従業員は58歳から、定年の65歳まで部長や課長ではなく、「○○コーチ」と呼ぶことにした。今後は指導役となることを本人が意識し、周囲にも認識してもらう目的から決めたという。また、役職定年後や雇用延長者の課題として、一般的にモチベーション低下の懸念があげられるが、同社では全従業員を対象とした独自の評価制度を2003年に導入した。公平で客観性の高い評価を行うことを目的とした「オープンジャッジシステム」という、360度評価制度だ。2015年には定年引上げと同時に、パートタイマーにも適用。業績、姿勢、能力についてそれぞれ5段階で評価し、結果を時間給や賞与、昇格にかかわる人事考課に反映する。「すべての従業員が公平に評価を受けることができる形になりました。上司だけでなく、周囲の従業員が評価し合うことにより、納得感が生まれますし、常に評価されることを意識することで緊張感が生まれます。また、がんばることが評価されるため、やる気の向上につながり、結果的に業績の向上に結びついています」と、平山課長は独自の評価制度の効果を話す。同社の給与は、58歳から毎年等級が下がることに合わせてゆるやかに下がる仕組みとなっている。65歳定年時の平均年収は約670万円。雇用延長後は少し下がり、約470万円。70歳以降は、パートタイマーとして、いずれも人事考課が給与に反映する仕組みとなっており、モチベーション向上の原動力として、公平な評価制度の存在は大きいといえるだろう。このほか、長く働いている従業員へのインセンティブ制度がある。60歳を迎えた従業員に還暦祝いとして東京ベイコート倶楽部1泊宿泊と交通費および現金10万円をお祝い金として贈呈。65歳の定年時にはカタログギフト5万円分とリフレッシュ休暇をプレゼント。雇用延長して70歳で満了を迎える従業員には表彰と100万円のお祝い金を贈呈。70歳以前の退職でも、66歳以降は年齢に応じた祝金を贈呈している。雇用延長を70歳まで引き上げて4年新たに選択制の勤務形態などを導入定年65歳、希望者全員70歳まで働ける雇用延長制度を整えて4年。雇用延長者は毎年増えて総務部人事課ヘルスケア課の平山貴規課長

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