エルダー2019年12月号
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特集70歳雇用 先進企業はこうしているエルダー15いて、今後さらに増加することが見込まれる。このことから、よりよい制度構築に向けて、現在の雇用延長者の声などを聞いて、新たに次の二つの制度や条件を加えた。①短日数・短時間勤務制度の導入(選択制)当初は、雇用延長後も週5日・フルタイム勤務を基本としていたが、65歳過ぎの雇用延長者の体調管理などに配慮して、2019年6月1日から、「週5日フルタイム勤務(9時~17時30分の7・5時間)」、「週4日フルタイム勤務」、「週5日・毎日朝夕いずれか1・5時間短縮」の3パターンから選択できるようにした。始まったばかりの制度のため、現在は従来通りの週5日フルタイム勤務者がほとんどで、週4日の短日数勤務、短時間勤務の選択者は少数だが、歓迎の声は多い。他方、周囲の従業員からも、特に困ったという声も聞かれていない。というのは、同社ではもともと女性活躍推進に力を入れており、また、安心して働ける制度の導入は高齢者にかぎったものではないとの考えのもと、法律を上回る育児休業制度や、子育て・家族の介護・本人のけがなどを理由に勤務時間を1日最大3時間短縮できる制度(2001年に導入)などを整備していたからである。その実績があるので、雇用延長者の時短も何の問題もなく受け入れられている。②雇用延長希望者の再雇用に一定条件を付加雇用延長者の活躍状況について、平山課長は、「長いキャリアでつちかってきた経験や知識は一朝一夕に身につくものではなく、若い従業員の足りない部分を補ってくれています。しかし、例えば物流センターでは自動化が進み、データ管理、システム管理は数十年前とは異なります。それらの慣れない業務に対しても、努力して取り組んでいるところも見られます。いくつになっても、それぞれの現場では常に成長が求められているのです」と現状を話す。自動化などの進化は、今後さらに加速していくことが見込まれる。そうしたことをふまえて、このほど雇用延長の仕組みを見直し、再雇用は希望者全員ではなく、一定の条件を満たすことを求めることとした(適用は2020年10月より)。一定の条件とは、①人事考課で一定基準を上回ること、②雇用延長の登用試験を受けること、③上司の推薦の三つである。「登用試験といっても、会社のことを理解できていれば解答できる内容です。向上心を持ってますます会社に貢献してもらうことを目的として条件を見直しました」と平山課長は説明する。「とりあえずやってみて、走りながらブラッシュアップしていくのが当社の社風」と平山課長。よりよい雇用延長制度の構築に向けて、今後も柔軟に対応していく構えである。雇用延長により活躍するシニア常にその時の自分の立場を受け入れる東京商品部PB(プライベートブランド)品質保証課に所属する木村順一さんは勤続46年の大ベテランで、現在67歳。2017年1月に65歳で定年を迎えた後、雇用延長を希望して、定年前と同じ仕事を続けている。業務は、自社ブランド商品の品質向上に向けた不具合対応や含有物調査対応など。雇用延長当初は週5日のフルタイム勤務だったが、今年6月に新しい制度ができてから短日数勤務を選び、週4日勤務している。現在の仕事について木村さんは、「知識や経験を活かして働く舞台があるという感謝の気持ちが、まず一番です。舞台があることは最高の幸せです。自分の仕事が業績向上に結びつくように、責任を持って取り組むことがやりがいの源。若手社員から担当職務で頼られるのは当然ですが、それ以外のことでも頼りにされたり、相談されたりするときに、自分の立ち位置を改めて理解します」と話す。木村さんは、以前はブロック長を務めた職責経験者だが、その役割は変化して、「現在は、

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