エルダー2019年12月号
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2019.1218販売職として活躍している。60歳以上の従業員数は178人(役員除く、嘱託、パート・アルバイトを含む)。これまでつちかってきた経験を活かせる仕事を継続し、活躍してもらう同社では、60歳で定年を迎えた後も、職種変更などはせず、それまでと同じ仕事を継続する人が多い。本部で働いていた人は本部で、店舗で働いていた人は店舗で、それぞれの専門的知識・スキルや、つちかった経験を活かして働いてもらうのが原則である。そのため、70代になっても販売職として店頭に立つことが珍しくない。以前は、定年を迎えてもしばらく役職を継続するケースもあったが、現在は、定年と同時に役職を外れ、それと同等の役割に位置づけられる「シニアアドバイザー」などの肩書に変わる。横山部長は、「経験のある方には、それを活かした意見も期待しているので、『シニアアドバイザー』という立場をになってもらっています。豊富な現場経験を基に、専門性を発揮しながら、現場で知識や経験を後進に伝えてもらいます。また、健康面や環境面に配慮し、単身赴任者は60歳になると地元に戻す形にしています」と説明する。1日の労働時間は、本人が希望すれば個別に対応するが、基本的にはそれまでと変わらない。ただし、休日の日数については、土曜日は隔週での休日から毎週休日にするというように、年間で20数日増やした。通常の社員の休日数は年106日が基本だが、60歳以上の社員平均休日数は129・5日、パートタイマーの平均は152日(1年間在籍社員のみの平均)である。体への負担などに配慮し、バランスの取れた働き方ができるようにしている。それ以外の面では特別な配慮はしていないという。定年予定者や満59歳の社員を対象に、年金受給に関する説明や、継続雇用に関する意向確認を行う「ワークライフバランスシニア研修」を実施するくらいで、例えば、高齢社員と若手・中堅社員とのコミュニケーションの円滑化を図るための工夫や、高齢社員の活躍をうながすための特別な取組みなどはない。「先輩に対する礼節はわきまえなければなりませんが、業務面では、むしろ分け隔へだてない対応をするほうがよいと考えています」(横山部長)と話す。店長・マネージャー経験者を対象に「グランドキャリア制度」を導入販売職や専門職の方たちの多くは「店舗で働きたい」と希望するが、2018年には、定年を迎えるまで従事していた販売職や専門職以外にも、特定の業務(職種)で、いままでのキャリア(経験・知識)を活かして活躍できる仕組みとして、「グランドキャリア制度」を導入した。対象となるのは、60歳以上のマネージャー、または店長経験者。雇用形態は、本人の希望をベースに、嘱託社員またはパートタイマーとなる。グランドキャリア制度では二つの職種(担当業務)を設定している。一つは、「品質管理」。お客さま対応の経験を活かし、お客さま目線に立った商品確認(色ムラ・縫製・匂いなど)を、全国数十カ所にある取引先の出荷場に出向いて定期的にチェックする。機械的な品質管理は従来から行っていたが、お客さまが購入時に気にされるところをベテランの目でチェックし、さらなる品質向上を図る。もう一つは、「内部監査」。全国の地域店舗(10~20店舗を予定)に配置し、これまで各店舗で年1回行っていた内部監査を年2~3回実施し、コンプライアンスを強化する。内部監査のないときは販売を担当してもらう。「店舗では、日々入ってくる商品に異常がないかを確認してから売り場に並べますが、経験を積んだ方は、一目見ただけで、『何か変だぞ』と異常に気づきます。勘といえば勘ですが、そ

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