エルダー2019年12月号
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特集70歳雇用 先進企業はこうしているエルダー19ういう商品は、よくよく調べてみるとだいたい問題があるものです。何万着も見てきたベテランの鼻、かぎ分ける力は、品質管理に大いに役立ちます。内部監査についても、店舗で何十年も働いてきた方は、内部で不正が起きるときの手口やタイミングなど多くの事例を知っています。また、現場では、何らかの不具合が原因で、本来の取扱いと異なるやり方が定着し、それがその職場のルールになってしまっていることがあります。それを正し、効率的なオペレーションのアドバイスをしてもらうことも期待しています」と横山部長はいう。どちらも、その人がつちかってきた経験を活かそうとしていることが分かるだろう。いまのところ、みんな「店舗で働きたい」と、販売職を選択しているが、シニアのキャリアとしてこうした活躍の道も用意されていることは社員にとってのメリットになる。今後も、従業員と社会のニーズに対応しながら、一人ひとりが活躍できる環境の整備に取り組んでいく考えである。また、現在は、高齢になって病気を理由に退職する人がいるため、そのサポートのために何らかの制度や補償ができないかを、人事部門で検討しているところである。知識と経験を持つシニアがプレーヤー兼アドバイザーとして活躍はるやま商事商品部シニアエキスパートの高たか渕ぶち淳じゅん也やさんと、同じく店舗開発部管理シニアアドバイザーの重しげ森もり俊宏さんは、ともに1953年生まれの66歳。それぞれの部署で専門性を発揮しながら、後進の指導にあたっている。2人が65歳を過ぎても働き続けるのは、使命感とやりがいがあるためだ。高渕さんは、もともとは広島に本社を置くスーパーマーケットチェーンに勤務し、紳士服などの衣料品の仕入れを担当していたが、20年ほど前、地元である岡山に戻りたいと、転職を決めた。入社後は、商品部や商品管理部で、商品の仕入れや店舗の在庫管理などを担当してきた。「私の場合、定年後も2年間は部署の責任者を継続し、3年目から、商品部と商品管理部を兼ねるアドバイザー的なポジションになりました。みんなにきっちりやってもらわないと会社が回っていかないという使命感と、若い人を育てていくということがモチベーションになっています。衣料品は素材と縫製がポイントになりますが、それがいま、どんどん変化しています。素材の面では、天然素材だけでなくいろいろな合ごう繊せん素材ができていますし、縫製については、工場が中国へ出ていき、いまは東南アジア諸国へと移っていっています。はるやまとしてどういうスタンスでものをつくっていくのか、その組立てをどうするのかといったところは、経験をふまえて教えていく必要があります」(高渕さん)一方、重森さんは、岡山市内のデパートにある大阪の紳士服メーカーの店舗の販売員として重森俊宏さん(左)と高渕淳也さん(右)

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