エルダー2019年12月号
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2019.1222就業規則に明文化した。定年延長の背景には、2010年ごろの業績低迷による危機的状況があった。「根本的な改革なくして企業の存続はない」と判断し、企業の成長に向け、Hグレードの取得を目ざし、雇用環境の改善を含めた大幅な見直し策を講じた。それが、「新たな企業風土の構築」、「人員不足の解消」、「資格保有者の増員」、「技術の伝承」である。「人員不足の解消」の具体策の一つが、定年年齢の延長であった。石田裕次専務取締役は「当社で働いている高齢社員は仕事に対して意欲的で、非常に元気があり、65歳での定年は早すぎるという意見でまとまりました。さらに年齢上限を設けないという意見も出ましたが、退職金制度の導入を優先することにしました」と、70歳定年とした理由を説明する。大手企業では導入が一般的な退職金制度であるが、中小企業には退職金制度そのものがない会社は少なくない。そのため、同社は退職金を「地域の水準よりも大幅に高い金額」に設定しており、高齢社員のモチベーションの一つになっている。このように退職金制度の導入により、高齢者の働く意欲もより増したという効果が得られた。石田専務取締役は「70歳定年は高齢社員にとって『70歳までがんばる』という張合いであったり、目標になったりしています。そのかいあってか、世間的な定年年齢である60歳、65歳を超えても変わらず、週5日、フルタイムで精力的に勤務し、会社に貢献してくれます。ただ、定年の70歳を迎えると再雇用を選ばず退職する人が多いですが、その後1年ほどで再雇用を希望して戻ってくる人が何人もいます」と70歳定年の効用と再雇用の傾向を説明する。70歳以降の再雇用は本人と面談のうえ、勤務形態を「短日勤務」、「時短勤務」など本人の希望に沿う形とするなど、フレキシブルに対応している。■人事評価と賃金制度定年延長と退職金制度で社員のモチベーションがアップし、社内の活性化につながったテクノスチールダイシン。賃金・評価制度については、能力と評価結果に応じて賃金を支払う制度を整備した。まず2016年度から、70歳までの全社員を対象とした人事評価制度がスタート。自己評価をもとに上司が評価を行い、目標管理制度を実施している。人事評価制度を導入した際は職種ごとの貢献度の比較がむずかしく給与体系に結びつけていなかったが、現在は評価結果と給与体系の接続を実現。年度始まりの4月と、賞与前の夏期・冬期に個人面談を実施して評価を行い、能力と貢献度によって給与・賞与がアップする仕組みに改定した。もともと60歳まで定期昇給を行う年齢給を取り入れており、それ以降も60歳到達時の基本給を維持するため、賃金が下がることはない。改定によって60歳以降も賃金アップが望めるようになり、高齢社員のやりがいの一つになっている。70歳以降については、時間給に切り替わり、出勤日数がそれぞれ異なるので一概にはいえないが、70歳到達時の基本給と同等の時間給となっている。石田裕次専務取締役

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