エルダー2019年12月号
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2019.1228あちこち回っていたこともあり、これまで、自分が住んでいる地域の人たちとの交流はまったくありませんでした。この研修を通して、自分の人生を考え、地域の人たちとの交流も大事だということを改めて実感しました。そこで自治会活動に積極的に参加したり、自治体でスポーツの指導やアドバイスなどを行うスポーツ推進委員などをやったりもしています」と、西潟副課長は自身の変化を語る。ベテランの労をねぎらう表彰や「ライフプランセミナー」も実施同社では、アクティブシニア研修のほかにも、高齢職員のより一層の活躍に向け、さまざまな取組みを行っている。「永年勤続者表彰」もその一つ。勤続15年、20年、25年、30年、35年、40年の節目のときに対象者を表彰するもので表彰状と記念品を授与する。「表彰式は、全国の支社ごとに行っています。表彰を楽しみにしているベテランの方も多く、長く勤めるうえでモチベーションにつながっています」と、営業管理部の長谷川克かつ人ひと副部長(兼営業人事グループ課長)は話す。さらに、勤続25年の営業職員については、研修や情報交換会も実施している。「勤続25年の節目のとき、年に1回、北海道から沖縄まで全国の営業職員に本社へ集まってもらい研修を行っています。研修後は、情報交換会を開催しています。社長をはじめ役員も出席し、営業職員のテーブルを回って労をねぎらいます。生命保険の営業職員は、お客さまと長いおつき合いになりますので、長く勤務し続けてもらうことに大きな意味があります。そのための制度を整えることも大切です」(長谷川副部長)。一方、内務職員に対しては、50歳以上の職員を対象に「ライフプランセミナー」を実施している。「ライフプランセミナーは、アクティブシニア研修と同様、公募型の研修です。以前は52歳の職員を対象に、全員参加の研修として実施していましたが、受講者から『なんだか、肩をたたかれているような印象がある』という意見が出たこともあり、2016年度から公募型に変更しました。同セミナーは、『人生設計』と『新しい生き方の提案』の2本柱で、退職後の暮らしや生き方について考えるきっかけとしてもらうための内容としています。内務職員は『総合職』と『エリア職』にわかれており、エリア職はほとんどが女性です。将来について男性は割と無頓着な人が多く、エリア職の女性たちのほうが高い関心を示しており、参加者も年々増加傾向にあります。具体的には、退職金の計算を参加者自身にしてもらったり、2018年度のセミナーでは、新しい取組みとして『プロボノ』を紹介しました」(坂井副部長)。同セミナーの受講者のほとんどは、プロボノリーグを体験していない。プロボノリーグに参加した西潟副課長は、「プロボノを体験すると、視野が確実に広がります。将来の生き方はもとより、いまの自分の仕事にどう活かしていくかということも考えるようになります。『もっと、自分の世界をあちこちに広げていかなければいけないな』と感じたことが一番大きかったですね」と、あらためてプロボノの効用を強調する。プロボノは、支援先の課題解決を通して、参加者の社会課題に対する関心の向上や、自分の強みの再発見、新しい生き方に気づくことなどにきわめて有効である。高年齢者雇用安定法の改正に向けては、70歳までの定年延長や定年廃止だけではなく、起業や社会貢献活動を含めた多様な選択肢を整えることが検討課題とされている。定年後もライフワークとして勤務可能な制度を整え、プロボノを通して外に目を向けるきっかけを提供する同社の取組みは、これからの高齢者雇用の見本となるものといえるだろう。

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