エルダー2019年12月号
31/68

エルダー29FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫八代将軍が名づけた小松菜将軍、小松菜によろこぶ「小松菜」の呼び名の由来については、面白いエピソードがあります。江戸時代の八代将軍・徳川吉宗(1684-1751)が、その名づけ親だというのです。吉宗というと「鷹たか将軍」と呼ばれるほど鷹狩りが好きで、よく現在の東京都江戸川区に訪れています。この辺りは、当時は湿地が広がり、ツルなどの鳥類が飛来するよいお狩場で、小松川という村がありました。狩りは数日間続きます。その間、将軍の世話をしたのが近くにあった神社の神主さんで、食事づくりをすることもありました。ある日、昼食に餅の入ったすまし汁に地元でとれた青菜をあしらってさし上げたところ、たいへんお喜びに。特に、青菜のみずみずしい香りとさわやかな味わいに感動し、菜の名前を土地の者にたずねます。「名前はありません」と聞くと、吉宗は、「ここは小松川だから、“小松菜”と呼んだらどうか」と、名づけてくれたというのです。それ以来、「小松菜」は呼び名として定着し、現在でも用いられています。人生100年時代を支える栄養成分いまでは、関東地方を中心に周年栽培されていますが、「冬菜」とか「雪菜」などとも呼ばれるように、寒さが加わってくると、味が濃くなり、格段においしさがきわだってきます。葉の緑色の濃さから見ても分かるように、代表的な緑黄色野菜です。なにしろ、体細胞の酸化、つまり、老化をはねかえす抗酸化パワーの強いβベータ-カロテンの宝庫なのです。同じように酸化防止効果があるというビタミンCは、ホウレンソウよりも多く含まれています。若返り成分を含むビタミンEも豊富ですから、相乗効果で、若さを維持するうえで大変に役立ち、人生100年時代を支える理想的な野菜といってよいでしょう。また、小松菜の特色にカルシウムの多さがあります。100g中に170mgも含まれていて、ホウレンソウの約3倍。カルシウムはストレス予防作用もあり、イライラするときは、小松菜をさっと油炒めにして食べるのがおすすめです。315

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る