エルダー2019年12月号
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高齢者に聞く第 回株式会社サンリッチ三島パートタイム従業員鈴すず木き美み知ち子こさん68 鈴木美知子さん(68歳)は、25年の長きにわたり、入浴介助の仕事一筋に歩いてきた。利用者の心に寄り添う介護サービスの提供を目ざして奮闘する鈴木さんの姿は、ともに働く若い職員のよいお手本となっている。人のために役に立ちたいと願う鈴木さんが生涯現役で働く喜びを語る。2019.1232施設の開設とともにデビュー私は、静岡県駿すん東とう郡ぐん長なが泉いずみ町の生まれです。駿東郡は三島市と沼ぬま津づ市に挟まれていますが、三島市内の商業高校に進んだこともあり、私は生きっ粋すいの「三島っ子」を自認しています。高校卒業後、東レ株式会社の協力会社に事務員として就職、その後結婚と同時に退職しました。6人兄弟で4番目の私は、2人の弟たちのためにも早く家を出るのが親孝行と思い、結婚を急いだのかもしれません。21歳のときのことです。嫁ぎ先は家族ぐるみで食堂を経営しており、私たち夫婦も手伝うことになりました。夫の両親や兄弟が高齢化していくなかで、いつの間にか私たちに経営が任され、将来を考えた私は、30代初めに独学で調理師免許を取得しました。20代、30代は家業と子育てに追われましたが、とても充実した日々でした。そのうち、食堂経営が先細りになる一方で、子どもにお金がかかるようになってきて、何か新しい仕事をしなければと考え始めました。ただフルタイムで働くのはむずかしく、自分の生活に合った仕事がないかといろいろ探すなか、新設の介護付有料老人ホーム「サンリッチ三島」の従業員募集広告が目にとまりました。それからもう25年。43歳からの人生を会社の発展とともに歩いてきました。「サンリッチ三島」は、平成30年度高年齢者雇用開発コンテスト※1で優秀賞を受賞。介護サービスの向上と合わせて高齢者が働きやすい職場環境の構築を目ざす同社の画期的な取組みは、県内外の注目を集めている。「入浴介助」という天職との出会い運命的な出会いというものが、ときにはあると私は思います。そのころ町内会ではボランティア活動が活発になり始め、私も積極的に参加するなかで、何か新しい仕事に就くなら、少しでもだれかの役に立つ仕事がしたいという気持ちが強くなっていました。サンリッチ三島は、要介護の人はもちろん、自立した生活を望む人たちにもサービスが提供できるという点で、従来の老人ホームと大きく違っていました。また、開設の3年前に温泉が湧ゆう出しゅつ、利用者は施設内の大浴場で温泉を楽しめるというのも画期的でした。その大浴場での入浴介助の仕事があり、まだ入居者も少ないため、1日1時間からでも勤務できるという募集内容に私の心は決まりました。運よく採用していただき、以来25年間、入居者の入浴介助を担当しています。最初は1日1時間、週3日というサイクルで勤務が始まりましたが、とにかく大浴場での入浴介助の経験者がほとんどおらず、マニュアルもなかったため、一緒に作業する仲※1 平成30年度高年齢者雇用開発コンテストで、高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞の受賞企業として、本誌2018年11月号で紹介されている

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