エルダー2019年12月号
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高齢者に聞くエルダー33間たちと相談しながら、どうすれば利用者の方に気持ちよく入浴してもらえるか、そのことを一番に考えて方法を工夫しました。大切なのはまず頭の中でイメージをつくることです。頭で考えた介助の方法に心を添えてサービスを提供する姿勢は、入社以来変わっていません。利用者の心に寄り添い、きめ細やかな介護サービスを提供するサンリッチ三島の存在はゆっくりと地域に浸透していき、施設の見学会にも多くの人が足を運ぶなか、次第に入所者が増えていった。それに比例して鈴木さんの勤務時間も少しずつ増えていった。利用者さんの笑顔に支えられて現在は月・水・金の週3日、午前2時間、午後3時間の勤務体制で、午前中は特殊入浴の介助をしています。特殊入浴とは、機械を使ってベッドのまま入浴してもらうことで、つねに6、7人の入居者を1人ずつ、2人のスタッフで担当しています。午後からはサンリッチ三島ならではの大浴場で、入浴を介助しています。初めて大浴場で入浴の介助をした方のことは、よく覚えています。入浴用の車椅子から降りていただき、大きな浴槽に入っていただくのですが、立つのが困難な方でしたから、浴槽から出ていただくときがたいへんでした。それでも温泉は気持ちがよいですから、とても喜んでいただきました。そのときの笑顔はいまも忘れられません。また、大浴場に入ることに抵抗がある入居者の方もいて、脱衣所までいらしたものの、脱ぐのが嫌だといわれて困り果てたこともありました。そうした方でもいまでは楽しみに待っていると話してくださることも多く、本当に嬉しいかぎりです。70代を目前にしたいま、体力的にキツイと感じることもありますが、入居者の方の笑顔が日々の励みとなり、25年の間、一度も辞めようと思ったことがありません。また、入浴介助はペアで行うのですが、若い人と組むことが多く、彼女たちからたくさんエネルギーをもらっています。一方、経験だけは若い人に負けないので、私が会え得とくしてきたことはすべて次の世代の人たちに伝えていこうと思っています。マニュアルに頼らず、一人ひとりの状況をきちんと理解してていねいに対応することの大切さを折に触れ話しています。100歳まで働ける職場とともにここで働くまで介護の世界は未経験だった私ですが、職場では資格取得を奨励しており、ヘルパー2級※2の資格を取りました。向学心のある若いスタッフの存在が、私をはじめ高齢の従業員のモチベーションアップにつながっています。本当は介護福祉士にも挑戦し合格したかったのですが、あと一歩というところでおよばず、残念ながら諦めてしまいました。「どうぞ100歳まで働き続けてください」と、いつも笑顔で声をかけてくれる福ふ家け英ひで也や社長はアイデアマンで、日常ではできない体験をする「異日常体験」を自ら企画し、赤坂離り宮きゅう迎げい賓ひん館の内覧や東京消防庁防災館での各種訓練の体験、あるいは観劇会や旅行など多彩なイベントを定期開催しています。高齢者に優しい職場で悩みも特にありませんが、まず自分が健康であるよう心がけています。介護の仕事は腰を痛めやすいので、自分流のストレッチで身体をほぐしていますし、身体を動かすことが好きなので、ソフトバレーボールやミニテニスなどスポーツを楽しんでいます。思えば健康であるから働くことができ、働いているから健康でいられるのかもしれません。実はいま、私の娘が同じ職場で入浴介助の仕事に就いています。子育て中なので短時間勤務ですが、私がいきいき働いている姿を見て同じ仕事を選んでくれたのだとしたら、やはりうれしいです。人の役に立ちたいとの思いから飛び込んだ介護の世界は、まだまだ学ぶことがたくさんあります。これからも生涯現役の心意気で元気にレベルアップを目ざしていきます。※2 ヘルパー2級……日本国内で介護のスキルを証明するために実施されていた、訪問介護員2級養成研修の別称。現在の介護職員初任者研修に相当

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