エルダー2019年12月号
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エルダー37選別、洗浄、撹かく拌はん、カット、充じゅう填てんなどの工程は野菜ごとに異なりますが、バジルの選別作業では2人がコンビを組んで大活躍。入荷が多いときには2tにもなるバジルを、ていねいに、しかも素速くさばくことから、上長に「ゴールデンコンビ」といわれるほど、信頼されています。目視で行う選別作業は、製品の品質にかかわる重要な工程で、後に異物感知機にかけるとはいえ、あらかじめ異物を取り除いておくことがクレームゼロの安心・安全な製品づくりに不可欠です。生産者から搬入されたばかりのバジルには、異物などが混ざっていたこともあったそうです。小さな虫などの細かい異物は探知がむずかしいため、何度もバジルを混ぜ返すなど、自分たちで考えた工夫を凝らして取り除いています。大事な工程を任されている立川さんと伊美さんは「食の安全にたずさわっていることにやりがいを感じます」と語ります。この職場で75歳まで仕事を続けたい立川さんは、20年ほどレストランで働いた後、くにみ農産加工でイチゴのヘタ取りのアルバイトをしたことをきっかけに、継続して働くようになりました。バジルの選別で大活躍ですが、特に好きな仕事はバジルの栽培なのだそう。くにみ農産加工では生産者によいタネや育て方などを指導するために、試験的にバジルの栽培を行っています。社内で希望者を募り、畑を割りあて、収穫分を買い取るという仕組みにしています。ここで一番広い畑を任されているのが立川さんです。「手間ひまをかけて育てるのは楽しいです」とニコニコ顔で話します。立川さんと同等の面積を担当する筋骨隆々の20代男性従業員をおさえて、収穫量も1位を獲得しました。自他ともに認める体力の持ち主で、昔から体を動かすことも大好きです。風邪もひかず、丈夫で健康そのもの。「最低でも75歳まで働きます」と頼もしい抱負を聞かせてくれました。伊美さんは、47歳で入社して勤続20年の大ベテランです。以前は、学校給食の調理補助をしていました。5〜6年ほど勤めて調理師免許を取得。くにみ農産加工の役員をしていた知人から紹介されて入社しました。「パート従業員でも入社時から健康保険に入ることができ、有給休暇も取得できるなど、福利厚生のよさが魅力でした」と振り返ります。いまは仕事が楽しくて仕方ないという伊美さんですが、入社したころは、人間関係で気苦労があったそうです。「いつか後輩ができたときは接し方に気をつけようと心に決めたものです」と当時の気持ちを打ち明けてくれました。まわりの従業員から「優しい人」と評判の伊美さん。かつて心に決めたことを実行し、新しい仕事に四苦八苦する新人に「いまはたいへんだけど慣れれば大丈夫だから」と励まし、「嫌な思いをしていない?」と聞くなどの心配りをしています。冷食チームは3グループに分かれ、毎日メンバーが変わりますが、メンバーのだれもが気持ちよく仕事ができるよう気を配り、与えられた仕事を毎日無事に終えたときに充実感を感じるといいます。「仕事が楽しく、会社に行くのが楽しみなので、健康なうちはできれば75歳まで働きたいですね」と笑顔で締めくくりました。くにみ農産加工は、会社を支える高齢従業員に、これまで通り元気で、これから先も長く働いてもらうための工夫や機器導入などを、前向きに検討していくそうです。 (取材・西村玲)だれもが働きやすい職場づくりに努めている伊美留易子さん

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