エルダー2019年12月号
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2019.122元・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 元・株式会社資生堂代表取締役執行役員副社長岩田喜美枝さんようになりました。これが第2ステージで、育児休業法(1992〈平成4〉年施行(現育児・介護休業法))、次世代育成支援対策推進法(2005年施行)が登場しました。特に後者は、就職氷河期が終わり、優秀な学生を確保したい企業のニーズが高まる時期と重なったこともあり、効果がありました。採用を有利に進めるために「くるみん※1マーク」を取得しようと、仕事と子育ての両立を支援する施策を推し進める気運が広がったのです。その結果、少なくとも大手企業では結婚・出産を理由に退職する女性は減少し、育児休業を活用して働き続けるのが普通になりました。女性労働力のM字型カーブの底も、かなり上がってきました。 そして現在は、女性活躍推進を経済の成長戦略と位置づける第3ステージを迎えています。女性活躍を進めるうえで大きな課題が二つありました。一つは仕事と子育ての両立、もう一つは育成・登用です。前者は第2ステー―岩田さんはこれまで、官民それぞれの立場から、女性活躍推進にたずさわってこられました。女性を取り巻く雇用環境のこれまでの経緯と現状を、どのようにご覧になっていますか。岩田 私は三つのステージに分けてこの問題をとらえています。 1986(昭和61)年に男女雇用機会均等法が施行され、雇用の分野での男女差別解消が進みました。大卒募集は男性のみとか、定年、教育訓練、賃金の取扱いなどが男女で異なるといったあからさまな待遇の差別が、形のうえでは見事なまでに姿を消しました。この時代が第1ステージです。差別禁止は進みましたが、だからといって女性活躍が進んだとはいえず、依然として結婚や出産を理由に退職する女性が大多数でした。 出生率の低下が進み、将来の労働力人口の不足が明らかになると、人口対策の面から、仕事と子育ての両立を図る政策が前面に出るジでほぼ目め途どがつきましたが、育成・登用、すなわちキャリアアップという課題が残っていました。2016年に女性活躍推進法が施行され、いよいよここが動き始めています。―キャリアアップについては、どのような課題が残されていますか。岩田 例えば、管理職に占める女性の比率が、日本では12%にとどまっています。役員では3〜4%※2です。この水準は、発展途上国を含めて、世界のボトムクラスです。日本は管理職昇進までの育成に長い時間をかける傾向があり、女性活躍推進に取り組んでも、急速にはその効果が出にくいことがその理由の一つとなっています。 また、両立支援策の拡充が図られた時期に、育児休業や育児短時間勤務の期間は、長ければ長いほど女性にとって望ましいと考える傾向が見られました。しかし、継続的にキャリアアップを図るには、できるだけ早くフルタイムの働き方に戻り、経験を積む必要があります。それが可能になるよう、男女を問わず、フルタイムで働く正社員の働き方それ自体を見直さなければなりません。―岩田さんも、かつて国家公務員として、子育てをしながら激務をこなされていました。男女平等、仕事・子育て両立支援の次は「キャリアアップ」が最大の課題に※1 くるみん…… 次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業を「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認定する制度※2 ILO「『A quantum leap for gender equality: For a better future of work for all』(2019年)

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