エルダー2019年12月号
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̶高齢者から始まる働き方改革̶で働き方が変わるエルダー39を細かく精査し合わせていく作業にコストをかけなければなりません。さらに、柔軟な働き方を取り入れようとすると、マッチングの頻度が必然的に高くなるので、そのコストがさらに高まります。だからこそ、お互いの求めている条件を可視化してモザイクのピースを効率よくあてはめるために、AI・ICTの活用が効果的なのです。働きたい時間、就労のために移動できる範囲、働きたい仕事、それらの情報を集約して地域における潜在的な求人情報とつき合わせていく作業を瞬時に行えるようにすること。これがモザイク型就労の実現へ向けたAI・ICTの役割になります。モザイク型就労の支援に向け「GBER」が誕生私たちは、2011年の研究開発の当初より東京大学高齢社会総合研究機構が開催する就労セミナーを通じて集まった、定年退職をして地域での就労を希望している千葉県柏市の住民を対象に、ジョブマッチングにおけるAI・ICTの可能性と試作システムの紹介とその評価に取り組んできました。2013年には、セミナー参加者を母体として柏市でのシニア就労の活性化を目ざして設立された「一般社団法人セカンドライフファクトリー」(千葉県柏市)との連携を開始しました。会員である地域住民との議論を重ね、試行錯誤を行いながらメンバーのモザイク型就労を支援するシステムの研究開発を進め、2016年に誕生したのが「GジーバーBER」というプラットフォーム※2です。GBERとは「地域の元気高齢者を集める」という意味の英語、「Gathering Brisk Elderly in the Region」の頭文字を取って名づけられました。GBERはまさに当事者である地域のシニアを交えたインクルーシブデザイン※3の過程で形づくられていきました。GBERを活用しているのは、セカンドライフファクトリーのなかで地域の植木の剪せん定ていの仕事を請け負っている、30名ほどのコミュニティです。地域住民から寄せられる依頼に応じて、参加するメンバーをGBERで調整し、地域の現場に出動するモザイク型就労を実践しています。小規模なコミュニティではありますが、運用開始から2019(令和元)年10月までの3年半で、延べ3441人がGBERを通じて社会参加を達成しました。特にこの半年で延べ800人ほどの就労実績が伸びるほど活発に活用されており、この連載が終わるころには4000人を超えそうな勢いです(写真)。「時間」と「場所」、利用者の「情報」をもとにマッチングを支援GBERには三つの機能が用意されています。一つめが最も基本となるカレンダー機能です。カレンダー上の日付をタップするだけで、この日は「1日中空いている」、「午前だけ」、「午※2 プラットフォーム……コンピュータにおいて、ソフトウェアが動作するための土台(基盤)のこと※3 インクルーシブデザイン……高齢者や障害者、外国人など、社会的弱者やマイノリティを、各種サービスのデザインプロセスの上流から巻き込んでいく手法GBERを活用して地域で活躍するセカンドライフファクトリーのメンバー

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