エルダー2019年12月号
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2019.1240後だけ」、「空いていない」という情報を登録することができます。それにより迅速に就労チームを編成することができます。二つめは地図機能で、現在募集されている仕事の地理的関係を把握することができます。三つめはQ&A機能です。現在は植木の剪定の仕事に限定されていますが、将来、たくさんの職種や地域活動が登録されるようになったときに、そのなかから手をあげたくなる仕事を効率よく探し出すことが必要になります。その際に、利用者が応募する可能性が高そうな求人を優先的に表示することができれば、利用者は就業先を探しやすくなります。しかし、利用者が何に興味を持っているかをリサーチするためには情報が必要です。さらに、多くのシニアはインターネット上に自分の情報を発信することには慣れていません。そこでこのQ&A機能を開発しました。潜在的な地域活動をいくつかのカテゴリに分類し、そのカテゴリごとの興味関心の有無をシステムの方から「はい」か「いいえ」で答えられる質問として投げかけるようにしました。そうすると時間のあるときに随時回答を発信してもらえるようになり、地域活動を推薦するに十分な情報を集められるようになりました。技術的な工夫としては、質問は一度聞いたら終わりではなく、その後の応募活動によって、利用者の事前の意思表示と実際の行動との食い違いを修正していくモデルを組み込んでいることです。例えば、クラシック音楽に興味があるといっているのに、もっぱらコンサートに行くのは演歌だったりするような場合に対応して、実際の行動のトリガーとなる情報を重視していく仕組みになります。就労から地域活動まで幅を広げた熊本版「GBER」もスタート3年を超えて活発に利用してもらえると、セカンドライフファクトリーのメンバーからシステムの使い勝手に関するフィードバックが集まりました。また、他地域の方の目にもとまるようになり、「地域で扱っている仕事や働き方に活用できないか」といった問合せも受けるようになりました。そこで、多くの方の声をふまえて、画面をぱっと見て得られる情報や必要な操作をイメージできるように、新しいGBERのデザインを進めています。新しいGBERではカレンダー機能で午前・午後以上に細かい時間帯を扱えるようにし、地図機能やQ&A機能も見やすく、操作しやすいようにリニューアルしました。この新しいGBERは、今年の9月から熊本県で社会実装が本格的に動き始めました。熊本版GBERでは、県という自治体が運用主体に入ってくることで、前回お話しした、ボランティアや生涯学習など就労にとどまらない、地域活動への参加の活性化につながる展開を、具体的に実証することができるようになります。熊本では現在、「一般社団法人夢ネットはちどり」(熊本県熊本市)における介護周辺領域の仕事のマッチングから始めつつ、地域活動の情報についても県の協議会から広く発信できるように体制を整えています。GBERのようなプラットフォームに求められるのは単純なビジネス上のマッチング機能ではないと考えています。地域のなかで100年の人生を生きるにあたり地域とどのようにかかわっていくのか、一日一日の人生をどのようにデザインしていくのか、利用者の生き方に寄り添う機能だと考えています。シニアにとっては「今日行くところ」という意味の〝キョウイク〟と、「今日用があること」という意味の〝キョウヨウ〟が大事とよくいわれます。その二つをサポートしつつ、そこに地域というステージをからめ、イベントなどに参加することを通じて地域を知り、そこで自分はどのように参加していきたいかイメージを膨らませやすくすることを目標に、熊本モデルの構築を進めています。現役時代の延長線上で与えられた仕事をこなすだけでなく、自分たちの住

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