エルダー2019年12月号
46/68

年次有給休暇について1働き方改革の一環として、年次有給休暇が10日以上付与された日から1年間以内に5日間の消化が使用者に義務づけられました。労働者ではなく、使用者に義務づけられた点が特殊ですが、使用者に対する義務づけに加えて、罰則も定められたことから、使用者が、年次有給休暇について、正確な理解と消化日数を把握することが求められるようになりました。まず、年次有給休暇とはいかなる制度であり、どういった点に注意が必要となるのでしょうか。有給休暇は、6カ月以上継続して勤務し、出勤率が全労働日の8割を超えている労働者に対して、給与を支給しながら休暇を取得できる権利を与える制度です。なお、年次有給休暇の付与日数は、週の所定労働日数が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上である場合は、6カ月の継続雇用の時点で10日付与され、その後徐々に増加し、週の所定労働日数や所定労働時間が少ない場合であっても比例的に付与される制度となっています。給与の支給がある点が、欠勤とは異なりますし、年次有給休暇の取得が権利である以上、これを取得したことによって不利益な取扱いがなされることも許容されないことになります。年次有給休暇の内容2年次有給休暇は、労働者の権利であると位置づけられていることから、原則として、労働者が取得を希望する時期に与えなければなりません(労働基準法第39条第5項)。ただし、使用者としては、その日に年次有給休暇を取得させたときに「事業の正常な運営を妨げる場合」には、ほかの日にこれを与えることができるとされています。後者が、使用者による、「時季変更権」と呼ばれるものであり、「事業の正常な運営を妨げる場合」にかぎって、その行使が許されています。これらの規定から、労働者の年次有給休暇の権利に関しては、労働者が時期を指定した場合に、使用者が時季変更権を行使することなく、これを拒むような行為(例えば、「不承認」として処理するような行為)をしただけでは、年次有給休暇の効力発生を妨げるこ業務の正常な運営を妨げる場合であれば、時季変更権を行使することができますが、単に代替要員の確保ができないといった程度では許容されません。使用者には、労働者が年次有給休暇を取得したとしても正常な運営が可能な体制を整えることが必要とされます。一方で、同時取得により支障が出る人数などをふまえた年次有給休暇の取得の運用が労使慣行となっている場合には、その慣行は尊重される傾向がありますので、労使間での調整を重ねながら、運用を固めていく必要があるでしょう。A2019.1244年次有給休暇の時季変更権について知りたい使用者に年次有給休暇の消化義務が課されるようになったため、有給休暇の積極的な利用を認める方針を取ろうと思っているのですが、一方で、年次有給休暇を同時期に取得されることで業務に支障が出ることへの懸念もあります。どういったケースであれば、年次有給休暇に対する時季変更権を行使しても許されるのでしょうか。Q2

元のページ  ../index.html#46

このブックを見る