エルダー2019年12月号
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エルダー3があります。いまでは共働きがあたり前で、家事・育児・介護などの家庭の責任を男性も等しくになうことが求められる時代ですから、かつて女性労働問題といわれた内容は、実は男性の生き方・働き方の問題でもあるのです。 これからは、フルタイム社員であっても、原則定時退社で残業なし、転勤はない、そんな一般職の働き方を標準として考えるべきです。そして事業活動上どうしても転勤が必要だという場合には、企業が一方的に異動の発令をするのではなく、本人が同意したうえで赴任するような仕組みに変える。もちろん転勤にともなう生活面での不利益は企業が十分補償し、転勤先で能力が高まれば昇進の可能性も高まる。そんな制度にあらためるべきです。―企業から海外勤務のオファーがあったとして、女性がこれに応じるのは、まだまだむずかしいでしょうか。岩田 赴任まで十分な準備期間がとれるのであれば可能だと思います。それと発令のタイミングですね。例えば、出産や育児をする時期はむずかしいかもしれませんが、それよりも前の若い時期や子どもが大きくなった後の時期であれば十分応えられるのではないでしょうか。また、子育て中であっても、単身赴任か家族帯同かの二者択一ではなく、例えば子どもだけを連れて赴任する選択肢もあっていいと思います。それと、社員や家族が生活設計しやすいよう、赴任期間のおおよその見通しはあらかじめ伝えてほしいですね。―政府の「成長戦略実行計画」で、70歳までの就業機会の確保の方針が示され、高齢者雇用も新しい段階を迎えようとしています。岩田 これまでの高齢者雇用対策は、高度経済成長期に確立した制度の根幹を維持したまま、それに接つぎ木きを重ねてきたようなものです。60歳への定年延長でも、65歳までの雇用確保措置でも、学校を卒業して入社した企業に定年まで勤め上げるモデルを前提にしていました。当時のご苦労は、いまとは比べものにならなかったと思います。岩田 女性が仕事で正当な評価を受けるには、男性の働き方の常識に合わせて働くしかないと当時は思っていました。忙しいときにはほとんど家に帰れないこともありましたが、もっと苦労したのは転勤問題でした。 残業を前提とした長時間労働や、定期異動での遠隔地への転勤といった働き方が標準で、それに合わせなければキャリアアップできないという常識そのものを変えていく必要「残業や転勤があたり前」という働き方の常識を変える

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