エルダー2019年12月号
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2019.1248はじめに独立行政法人労働者健康安全機構に属する各治療就労両立支援センターでは、働く人々の健康づくりに関するアンケート調査等を実施しています。2015(平成27)年度に北海道中央労災病院治療就労両立支援センターで実施した「勤労者における体組成と生活習慣の関連について」の調査では、女性勤労者と比較して男性勤労者に「早食い」と回答した人が多く、男性勤労者の42・4%を占めていました。年代別に早食いの傾向を確認したところ、30代と40代に早食いの人が多く、50代では食べる早さが「普通」と回答した人が多くなり、また、50代と60代の人は食事量について腹八分目を意識している人が多いことなどがわかりました。これらのことから、50歳以降の男性勤労者が、「よく噛んでゆっくり食べる習慣」を会得することにより、食べすぎ防止につながり腹八分目の食生活を実行しやすくなる、さらには健康の維持・増進につながる可能性がある、と考えました。食事に関する先行研究では、肥満が早食いと関係していること※1、早食いが血圧上昇や脂質異常症、血糖値上昇と関連していること※2が報告されています。一方で「肥満症治療ガイドライン2006」では、よく噛んで食べることが肥満治療のための行動療法の一つとして記載されています。そこで、当センターでは、50歳以上の男性勤労者を対象として、食事量や食事内容については触れずに、「よく噛んでゆっくり食べる」ことを6カ月間支援することによって、身体の変化が起こるかどうかを目標に調査を行いました。取組み内容調査は、50歳から68歳の男性勤労者12人(50代7人、60代5人)を対象としました。当センターで2018年に作成した小冊子『ゆっくり食べてみませんか』※3を用いて面談を行い、一口30回程度噛むか、または一口の噛む回数を従来よりも10回程度増やすことを助言。そのうえで、毎月1回のアンケート(一口の噛む回数、1回の食事時間、ゆっくり食べるために工夫していることなど)、開始前と6カ月後の体成分測定、さらに同意を得た人にのみ血液検査を実施しました。また、12人の参加者へは、毎日チェックシートで自分の行動を振り返ることをお願いしました。9割以上で体重減少、5割が体脂肪も低下6カ月の取組みの結果、体重が減少した人は11人、そのうち体脂肪も減少した人は6人でした(図表1)。また、一口の噛む時間と1回の食事時間について、開始時と6カ月後の変化を特別寄稿働くシニアの健康を守るために―よく噛んでゆっくり食べよう―独立行政法人労働者健康安全機構北海道中央労災病院治療就労両立支援センター 保健師小お宅やけ 千恵子※1 大塚ら.Journal of Ep16(3):117-124,2006.※2 福元ら.日本未病システム学会雑誌11(1):70-72,2005.※3 https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/kinrosyashien/pdf/H28-1.pdf

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