エルダー2019年12月号
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2019.1262術短期大学造形科にて彫ちょう塑そ※を専攻。学生時代は店でデザインの下絵をせっせと描いていたという。「うちは鎌倉彫の愛好家のため、つくり手のために、木地の販売もしていました。まだ何も彫られていない木の器にデザインの下絵をつけると好評で、木地の売れ行きがよかったのです」幼いころから父の仕事を見ていたという小夜子さん。伝統の技術も良質の木地も引き継ぎ、2008(平成20)年に店を継いだ。小夜子さんの二つのポリシー「暮らし」と「自由」小夜子さんが考える、鎌倉彫のあり方。まず一つは、「『暮らし』とともに」である。時代とともにライフスタイルも変わり、台所はシステムキッチンに、座卓はテーブルになった。食器もデザインや機能がより重視されている。ゆえに、鎌倉彫の器も暮らしのなかで使いやすいように、盛ったお料理やお菓子が美しくおいしく引き立つように、と心がけている。最近のおすすめは、和モダンの食膳。ランチョンマット代わりに敷いて使ってほしいという。もう一つは、ひらめきを大切にした「『自由』なデザイン」だ。「よいデザインだと、彫るときもワクワクします」と、小夜子さんはデザインの力を笑顔で語る。ご自身の鎌倉彫のデザインは、鎌倉彫以外のアートや、あちこちで見つけたものがヒントになるという。三代目になる娘の史ふみ子こさんとも、よく旅をするそうだ。ギリシャでは鎌倉彫のモチーフにも使われる麻の葉の文様を見つけ、フランスでは木とは異なる石の文化に触れた。旅先でも、デザインの話になる仲のよい親子だが、互いの個は尊重している。母を「小夜子さん」と呼ぶ史子さんは行動派。自由な気風の持ち主だ。「私は、デザインと木地の形が下絵、彫り、塗りの工程がある鎌倉彫。お店とつながっているスペースで彫りの作業をする小夜子さん彫りは、対話です。もう少し彫ってとか、木地が教えてくれます。その声を聞き、少しずつ手で彫るから、調和のとれた美になります※ 彫塑……彫刻と塑像(そぞう・粘土による造形物)

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