エルダー2020年1月号
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を活かして活躍。そして後期では、それを伝えていくというステップ論のキャリア観では証明型のマインドセットに陥りがちとなります。すでに、過去に学んだことを伝えるというスタイルでは適応できない時代になりつつあり、年齢に関係なく、学び続け、お互いを高め合う時代になっていることを理解する必要があるのです。三つ目は強みづくりとコミュニケーション力の向上です。60歳以降の働き方に変革を起こそうとすると、その前の10年間、すなわち50代の過ごし方・学び方が重要になってきます。特に重要なのが、50歳前後で今後15年近くを支える強みをつくることにチャレンジすることと、コミュニケーション力に磨きをかけていくことです。ある会社の50歳研修で、「50歳にもなって何かを学べなんて失礼だ」と受講者から叱責を受けたことがありますが、その考え方そのものが問題です。50歳前後で今後15年の軸となる知識を求めてチャレンジをしていくことは、人生100年時代には欠かせない考え方なのです。また世代の離れたメンバーとも一緒に仕事をすることが増えることから、コミュニケーション能力、特に多世代間でのコミュニケーションスキルは飛躍的に高めていく必要があるのです。(4)人事制度の改革高齢社員の積極的な活用には、人事制度の整合性も不可欠な要素です。特に多くの企業が採用している一律処遇では、高齢社員の活性化は実現できないといっても過言ではありません。評価といった外発的な動機に頼らず、内発的な動機づけや、自社に対する恩返し期間として一律処遇にしている企業も少なくありません。しかし、高齢社員を取り巻く環境は日々変化しており、一体何歳まで働くかも見えないなか、フェアな評価制度や多様性を活かすという観点で最低限働き方の選択が可能な仕組みに変えていく必要があるといえます。(5)組織風土の改革最後の取組みは、組織風土改革です。「だれもが何歳になっても成長し続けることがあたり前」、「お互いをリスペクトして学び合うことがあたり前」、「お互いの強みを認め、弱みを補い合うことがあたり前」という組織風土に変わることが、この取組みの究極のゴールとなります。このような風土が構築できれば、高齢社員にかかわらず育児や介護で制約のある社員も活かせる組織に変われることにつながるのです。高齢社員を人材育成で活かしていける組織に進化していくためには、多面的な改革が必要になるということで、五つの視点で取り組むべきポイントを考えてきました。高齢社員のボリュームが増えるなか、高齢社員と中堅・若手がともに成長していく「共育」というスタイルが必要になってきます。インドを持った、イキイキした高齢社員が増えていくことで、高齢層の活性化だけでなく、未来が見えず悩んでいる若者のキャリアのロールモデルを示すことにもつながっていきます。高齢社員の活躍・活性化の取組みは、その企業が長い職業キャリアを通じ、社員に対して何が提供できるかを示す取組みともいえ、その点では人事部門の根幹となる取組みといえます。は、自社が社員に提供する長期のキャリアが本当に価値ある、魅力的なものになっているのかを再考し、この取組みを進めていただきたいと思います。また何歳になっても成長していこうというマ本稿をここまでお読みいただいたみなさんに  ンサルティング部門で活躍後独立。株式会社ジェイフィールに設立から参画し、組織開発やミドルマネジャー向けの研修講師を中心に数多くのプロジェクトを担当。主な著書に『「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント』(日本経済新聞出版社)など。1974年生まれ。アサヒビール株式会社、同関連会社でのコ片岡裕司(かたおか・ゆうじ)おわりに10

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