エルダー2020年1月号
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させていただいています」(岩本さん)岩本さんのプロ人財育成塾「キャリアデザイン塾」には、そんな岩本さんに憧れる社員などが集まる。過去と現在を振り返って将来のキャリアを立て、10年後にどういう会社にしたいか新規事業を計画し、そのために自分が何をすべきか考えるなど、社員の視座を高めながら情熱を持って育成している。ユニバーシティの講座は、午後3時~3時30分開始のものが多い。社員は仕事を早く終わらせて受講し、そのまま帰ろうという気持ちになる効果もあるそうで、以前より残業時間が減っているという。直近の年間受講者数は、延べ9279人。複数回参加した人を1人と数えるユニーク数だと4915人である。自由参加とはいえ、多くの社員が受講している。意外なことに、管理職の参加が多いという。事務局では、「階層別研修は整備されているが、中途で入社した管理職は経験に任せているところがあり、研修に飢えていたのではないか」と分析している。上司が積極的に受講し、部下にもすすめるので、部下の受講も増えるという、よい循環が生まれている。どのような講座があるかは、ガイドブックやイントラネットで案内している。学部長たちが講座のタイトルからこだわり、中身も練り上げているので、受講者の満足度は高いという。人事制度において、個人目標の10%は自じ己こ研け鑽さん(上司は部下育成)に充てるようにしていることも、受講の促進につながっている。講師として登壇した社員は100人を超え、人前で話すことで自身の学び直しになるという。ちなみに、登壇したからといって手当などが出るわけではない。地方の会場に出張することもあり、口では「定年前より忙しい」というシニアもいるそうだが、みんな、後進を育てることに大きなやりがいを感じて活き活きと働いている。その証拠に、同社では社内講師やキャリアアドバイザーが人気職になっていて、人事に「どうやったらなれますか」という問合せが増えているそうだ。50代でキャリアコンサルタントの資格を取得する人も多く、学部長や社内講師が、将来のキャリアとして認知されてきたといえる。ユニバーシティの今後については、「いまは社内のユニバーシティですが、業界のユニバーシティにしていきたいですね。業界外にも広げ、イノベーションにつなげていけるといいですね。また、社内講師や研修コンテンツをお金を取れるレベルにまで引き上げ、社外に対しては有料化して提供することなども考えています」(川村部長)という。近は、若手の働きがい創出や離職防止を課題ととらえる会社が多いのですが、一方でシニアが増えていきますので、シニアの活躍と若手育成とを結びつけて、どう好循環を生み出すかが重要です。若手を育成するうえでは、同時にエンゲージメントを高めることが大切ですので、当社のように、研修の内製化を進め、経験豊富なシニア社員に育成の役割をになってもらうのは有効だと思います」とアドバイスする。人たちに対して、「40代でも、『もう年ですから』とか、『これまでの経験を活かして定年までいきます』などという人がいますが、いくつになっても、好奇心を持って学び続けることが大事です」とメッセージを贈る。その言葉通り、岩本さんは昨年、63歳でキャリアコンサルタントの資格を取得した。「楽しんでいるんですよ。同じことをしていると飽きてしまいますので」と笑う岩本さん。シニアの活躍を活かす会社の取組み、年齢にかかわらず学び続けながら後進を育てようとするシニアの意識、主体的に先輩から学び成長しようとする若手・中堅の三者がうまくかみ合い、よいサイクルが回っている。川村部長は、他社の人事担当者に向けて、「最また、岩本さんは、これからシニア層になる働き方改革にもよい効果今後は社外への拡大も視野にん14

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