エルダー2020年1月号
18/68

高齢社員から若手社員への技術・技能の伝承といっても、ここには一つの問題点がうかがえます。それは、「そもそもどのように技術・技能を伝えればよいのか」ということです。熟練の技をいざ伝えようとしても、若手社員に聞く耳を持ってもらえなければうまく伝わりません。このとき、「指導上手」な高齢社員と、そうでない「指導下手」な高齢社員がいることが、若手社員からの声として伝わってきます。その一番の原因はコミュニケーションの仕方にあるように思われます。高齢社員の方たちが若手社員のころは、「技は見て、盗んで覚えるもの」という、いわゆる頑固職人タイプの先輩に指導されてきた方も少なくないでしょう。ですが、それをいまの若手社員にあてはめようとしても無理があります。下手をすると、「パワハラ」、「モラハラ」ととらえられてしまう可能性すらあるのがいまのご時世です。また、若手社員の特徴の一つとして、「自分で納得しなければ動かない」というものがあります。「俺の背中を見ろ」は残念ながら通用しない時代なのです。しっかりと適切なコミュニケーションを取ることが求められています。若手社員の声として「指導下手」な高齢社員にはいくつかの特徴があります。・話が長い(自慢話が多い)・上から目線・聞きたい話をしてくれないこの3点が、筆者の周りの若手社員から聞こえてきます。一つずつ見ていきましょう。(1)話が長い(自慢話が多い)「話が長い」というのは、高齢社員にかぎらず、指導や教えることが下手な人の共通点です。話が長くなってしまう理由の一つは、知っていることをダラダラと話し続けることです。ただ自分が持っている知識や自慢を垂れ流すように話をされても、指導される側は興味を失くしたり、話をシャットダウンしかねません。それどころか話の大部分が「自慢話」だったりすると、若手社員はうんざりしてしまいます。がった「困った講師の話」として、セミナーの最初の30分が講師の自己紹介(ほぼ自慢話)だったというものがありました。(2)上から目線ということですが、これは若手社員に対して敬う気持ちがないことから発生します。高齢社員が経験豊富なのは事実ですが、若手社員も当然ながら高齢社員の方が知らない技術や情報をたくさん持っています。「近ごろの若い奴らは……」、「俺が若いころには……」というのは、自分が若手社員だったころを思い出すと、あまり聞きたくない、いわれたくない言葉だったのではないでしょうか。ちなみに、あるセミナー運営会社の方にうか次になぜ「上から目線」になってしまうのか、若手社員から見る「指導下手」な高齢社員出典:(一社)大阪中小企業診断士会「モノづくり企業の技能伝承アンケート」(2017年)伝承のノウハウ・仕組みがない熟練社員の指導力不足または指導意欲不足(熟練社員が教えたがらない)若手社員が不足している若手社員の能力・意欲不足伝える技能内容が不明確マニュアル(わかり易い作業手順書)がない社内のコミュニケーションが不足している時間がないITなどの環境が整っていない費用がかかるため技能伝承は時間がかかるものだからその他0%10%20%30%40%50%60%16図表2 技能伝承がうまくいっていない理由

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る