エルダー2020年1月号
20/68

■■新■さんは、自著﹃定年後﹄(中公新書)において、■■神戸松蔭女子学院大学人間科学部教授の楠■木■技能伝承を進めていてうまくいっていると回答した企業(33社)の80%が、技能伝承に必要な期間として1年超の複数年をあげており、最も多い回答(38%)は3年以上必要とするものでした(図表3)。やはり、技能伝承はある程度の時間をかけることが必要なことが示唆されています。長い目で見守る気持ちが肝要です。・格好つけて話をしない。若手社員に敬遠されがちなのが「武勇伝」です。信頼関係が築けており、若手社員から「聞かせてください!」といわれたとしても、武勇伝は控えめにしたいものです。それよりも、「たいへんだった失敗談」を聞きたがる若手社員が多いと筆者は感じています。どのような失敗をし、どのような思いをしていまの自分があるのか。ありのままの話をすることで共感してもらえれば、さらに話を聞いてくれるようになります。失敗を思い出し、若手社員に伝えることによって自分のモチベーションの再活性化にもつながりますし、「失敗しても、それをリカバリーすれば大丈夫だよ」と伝えてあげることで、若手社員も安心してくれます。・相手本位で接する最後に、何よりも心がけてほしいのは、自分勝手に自分のやりたいように指導するのではなく、「相手本位」で指導するということです。「相手本位」とは、互いの立場を理解し合い、信頼関係を築き、若手社員が学びやすいように手助けをしてあげることです。「自分本位」で指導しようとすれば、若手社員は、表面上は繕■ったとしても腹のなかでは舌を出しているかもしれません。若手社員の話をよく聞き、「相手本位」で接することが大切です。若手社員の話を聞けないようでは、仕事だけではなく、社会からも置いていかれてしまうかもしれません(これは筆者自身も気をつけようと自分にいい聞かせています)。そうならないよう、若手社員のよき理解者として指導にあたっていただくことで、技能伝承がうまく進むだけでなく、高齢社員の人生の質の向上にも寄与すると思います。「60歳から74歳までの15年間は﹃黄金の15年﹄である」と述べています。この「黄金の15年」は、高齢社員の方が若手社員に技術・技能を伝承できる貴重な時間になるのではないでしょうか。高齢社員が若手社員と良質なコミュニケーションを図ることによって、これからの日本企業をけん引する若手社員にとって必要な技能伝承が円滑に行われることを期待しています。ートナー講師。「仕事の教え方研修」や演劇(即興劇)を通じた「非言語コミュニケーション研修」を実施している。    ■■京大学大学院にて「現場でのOJT」について調査研究。2013年、学際情報学修士号取得。著書に『オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。ラーンフォレスト合同会社代表社員、株式会社ラーンウェルパ株式会社ラーンウェル代表取締役。専門分野は「教え方」。東関根雅泰︵せきね・まさひろ︶林博之︵はやし・ひろゆき︶おわりに出典:(一社)大阪中小企業診断士会「モノづくり企業の技能伝承アンケート」(2017年)3年以上38%6カ月未満 12%6カ月~1年未満8%1~2年未満 21%2~3年未満 21%2020.118Q. 技能を伝承するためにどれくらいの期間を要しましたか(要しそうですか)。図表3 技能伝承に必要な期間

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る