エルダー2020年1月号
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ぼる昇のさん(73歳)にお話をうかがった。款かなどが示された看板、精算機にあるテントな若手社員の定着率のよさも特徴だ。離職するケースがほぼないため、2019年度は60歳以上の割合が11・3%となり、平均年齢は35歳に。いまや、ボリュームゾーンは若手に変わりつつある。作業場は10代から20代の若手が切せ磋さ琢た磨まし活気にあふれており、工場見学に来た高校や社員の出身校から、さらに若手が入社する好循環が生まれている。このプラスの循環の要となっているのが、若手育成の役割をになうベテラン社員だ。同社の技能継承の特徴は、現場の人員配置にある。製造部は製造1課から4課で構成され、各課は7〜8人で編成されているが、それぞれの課に60歳以上のベテランを1〜2人配置して技能継承をしやすい環境を構築した。日々のOJTのほか、随時、講習会のような体裁で技能の伝達が行われることもある。ベテランが若手一人ひとりの習熟度合いはもちろん、個性や性格まで把握したうえで、じっくり対話しながら指導することで、若手の意欲を引き出しながら技能の継承が行われている。「生産性の向上を目ざし、当社ではコンピュータ化・機械化を進めていますが、それでも仕事全体の7割は人の手が必要で、人の手なくして製品はできあがりません。長年勤めているベテラン社員が持つ技能と人間力を、若手に継承していくことが必要不可欠です」と話す星野社長。導入した機械で行うのは、初期段階の工程にあたる素材の曲げや穴空け、切断などにかぎられるため、その後の工程の溶接部分の削りや塗装、研磨などはすべて技能を持つ人の手による作業になる。あるいは、最新のコンピュータなどを活用した素材加工の自動化も進んでいるが、曲げた際にたわみを起こさせない技能であったり、たわみが出た場合の修正の方法などは、人の経験と技能でしかカバーできない。特に同社の製品はほぼオーダーメイドであるため、毎回、製品の設置場所の諸条件を反映させながら、構造、強度などを考慮した対応を行わなければならず、また、素材のよさを十分に引き出す加工は豊富な知識と確かな技術力をもってしかなされない。そうした技術を若手は高齢社員から日々学んでいる。パーキング設備(満車・空車を示す電光板、約やど)の製造などを行っている部署である。全国に展開するコインパーキングブランドの設備を同社で一手に引き受けているため、量産型の製作が中心となるが、オーダーメイド製品を製作することもある。のポイントは「話し合うこと」。お互いの考えを共有し、理解するために、課題になっているモノを片手に意見交換を行っている。「昔は『技は盗むもの』といわれていて、仕事を与えられたらそれっきりでフォローも何もしてもらえませんでした。自分で製品を見て研製造部門4課で若手育成にあたっている田口田口さんが所属する製造部門4課は、コイン勤続25年の田口さんの若手社員への技能継承っくんっも若手社員と話し合って能力を伸ばすいまの時代にあった技能継承が肝き星野耕一代表取締役社長20

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