エルダー2020年1月号
23/68

究し、先輩のやり方を見て技を磨いたものです。『どうすればいいのか』と聞くことすらできませんでした。ですが、いまはそういった時代ではありません。少しでも早く技能を習得してもらうためには、コミュニケーションをとり、話し合うことが大切です」その一方で、こだわりの一つとして「若手から教えを乞うまでは教えない」ことを心がけているという。手取り足取り教えるのではなく、若手社員の自主性に任せた姿勢をとっているのは、自分自身で考えさせるためだ。直面した問題について解決法を自ら考えることで、思考力を高めることが目的だ。ケガやたいへんな損失につながるような場合以外は、自由に学ばせ、考えさせる。これが若手社員を伸ばすために必要なのだ。「たまに褒めるのもポイントです。『たまに』というのが肝。いつも褒めると天狗になってしまいますからね」と田口さんは笑う。星野社長は「ベテランたちは若手社員を自由にさせていますが、いつも様子を見ていて、たまに褒めたり、納期をかんがみて声をかけるなど、フォローを欠かしません」と説明する。さらに、田口さんは段階的な学びこそが重要であると指摘する。「1の次は2、その次は3、4、5と一つずつステップをふむようにしなさいとよく話します。1と2ができるようになったとしても、3と4を飛ばして5をやろうとすればうまくはいきません。きちんと段階をふんで、技術を学ぶことが、大きな壁にぶつかることなくスムーズに成長するためには必要だと思います」。日々様子を気にかけ、指導している若手社員たちが技能を習得していく様子を見るのはかけがえのない喜びだ。「若い人に囲まれた職場で過ごすと気持ちが若くなります。それに自分では歳をとっているとは感じていないので、世代間ギャップもないですよ」と話す。みとして、安全な職場づくりを目ざし、2017年から社内に安全推進委員会を設置した。機械の操作は常にケガと隣り合わせであることから、全社員総出で安全対策に努めており、高齢社員も積極的に参加。工場内のパトロールなどを通して、整理整頓を喚起し、事故を起こさないような材料の置き方などを推進している。高齢社員はその経験をもとに注意事項を提言するなど、若手社員らの安全意識の向上に一役買っているという。て分け隔てるのではなく、若手社員も高齢社員もそれぞれが持つ特徴を活かし、活かすことだと考えます。高齢者だからといって保護するのではなく、若手社員や会社に必要とされていると自覚を持ってもらうことが、生産性向上と技能継承に持てる力を発揮してもらうことにつながるのではないでしょうか」と締めくくった。ベテラン社員が、お互いに持てるものを発揮することで技能の伝達と習得が今後ますます進み、さらなる飛躍を遂げることだろう。高齢社員の知識・経験を活かした新しい取組最後に星野社長は「大事なことは、年齢によっ伸びしろを持つ若手社員と知識と経験を持つ技能継承は若手社員と高齢社員がそれぞれの持ち味を活かすことが大切若手社員育成をになっている田口昇さん21

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る