エルダー2020年1月号
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能力開発の自助・共助・公助心にやってどうするの」などといったりする可能性がある。こんなふうに周囲に不満をまき散らしている無気力な社員が24%いるとしたら、どうでしょうか。いま、日本の生産性が国際的にみて低いといわれているのは、中高年の半分が「自らの『成長』を実感できていない」、「やる気が湧かない」、こういう感覚を持っているからではないかと思えるわけです。それでは、中高年の能力は低下しているのでしょうか。あるいは、中高年が持つ仕事上での技術や技能、経験、人脈が、賞味期限切れになっているのでしょうか。この点について考えてみたいと思います。OECD(経済協力開発機構)のPIAAC(ピアック)という「国際成人力調査」の結果によると、大人の学力は25〜29歳をピークにゆっくりと落ちていくのですが、日本の60〜65歳でも「読解力」はピーク時のほぼ86%、「数的思考力」は90%を維持しています。つまり、は落ちていないらしいということです。そうすると、ある年代から先が使えなくなっていくというのは、実は働かせ方、仕事の割り振り方、仕事の設計の仕方に問題があるのではないか、こうした疑問が湧いてくるわけです。ここからは、人生100年時代に向けて、長いキャリアの紆う余よ曲きょく折せつを乗り越えていくための、自助・共助・公助についてお話ししたいと思います。キャリアの時間軸が長期化すると、その間にリスクが増えます。会社がつぶれる、部門が廃止される、仕事が変わってしまう、転職しなくてはいけない、あるいは、思いもかけない病気になってしまった、といったようなリスクです。同時に、実はチャンスも増えます。例えば、日本で人気のあった経営評論家のピーター・ドラッカー氏の奥さまは、80歳を超えて起業し、つくった製品が非常によく売れたという話がドラッカー氏の著書に書かれています。こうしたチャンスが生まれてくるんですね。長年の経験を新しい時代の技術や、新しい時代のコンテクスト、脈絡、流れに合わせて、私たちが新たな仕事を起こしていくチャンスです。そして、中高年が若手とお互いに助け合う、こうしたコミュニケーション能力、あるいは協調性、正確にいうと、分業を行う「分業力」をいかに身につけていくかが大事であるということだと思います。リア形成を促進し、円滑な能力開発を可能とする各種の政策を、国や自治体がつくっていく。「共助」では、企業などが中長期的に展望できるキャリア開発に配慮をしていく。そして、「自助」では、長く成長し続けられるキャリア発達。こうしたものを、私たちは考えていく必要があるということです。は、職業生活設計を行い、その職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上に努めるものとする」とあります。平たくいうと、キャリアデザインです。キャリアデザインをして、そのデザインに沿って自発的な能力開発をしなさい、ということ。まさに自助です。していくことに努めなければいけない。国と都道府県は、それらに対してさまざまな制度をつくり、運営する努力をしていく。自分自身にこうした自助努力の努力義務が課されているということをご存じでしたか。やらなかったら罰則があるというわけではありません。でも、高齢期の仕事に向けて、いろんなことを配慮しておきなさいということが、個々の労働者に対する義務としても書かれているのです。キャリアの展開についても、「公助」では、キャ職業能力開発促進法3条の3には、「労働者これに対して事業主は、いろんな意味で支援これらはすべて努力義務ですが、みなさん、60代になっても、その1割ほどしか、知的能力25

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