エルダー2020年1月号
35/68

サミット広報室の植川肇さん曰く「設楽さんが切るお刺身は切り口がとても美しい」。魚の筋に対して直角に刃を入れ、きりっと角を立てる包丁さばきは名人芸の域といえる。サミット株式会社は2016年にパートタイム社員の定年を60歳から65歳に引き上げ、で引き上げた。高齢従業員の積極的な活用に注目が集まっている。はさみを包丁に替えて「まだ働ける」という気持ちを支えにくださり、自ら包丁を握って素人の私にていねいに伝授してくれました。いまでも本当に感謝しています。手先は器用な方だと思いますし、手先を使うことが好きなのです。小さいころは、お人形の髪を結い上げたりほどいたりして、一人でずっと遊んでいるような子どもでした。念願の美容師となり、一生の仕事にすることは叶いませんでしたが、美しくお刺身を仕上げることに大きな喜びを覚えるようになりました。人生にはいろいろな可能性があるものだと思っています。この仕事を続けていて一番うれしいのは、お客さまの笑顔に会えることです。いまは地下で作業をしていますが、以前はお客さまから直接声をかけてもらって調理する「お魚キッチン」という部署にいました。まも多く、特注の刺身の盛合せを依頼されることもあります。魚によって切り方も微妙に違うのですが、喜んでいただきたい一心で、ていねいにさばいています。刺身の王さまともいえるマグロを大きな包丁でさばくこともあります。かつて教えてもらったことを忠実にくり返しているだけですが、刺身の世界は奥が深く、もっと美しく、もっとおいしそうに仕上げたいと、どんどん欲が出てきますから不思議なものです。変わりました。勤務時間はずっと変わらず原則的には8時から16時まで働いています。ただ、月曜と木曜は休ませてもらっています。休日には友達と会ったり、20年前から続けている「織りビーズ」でアクセサリーづくりを楽しんだりしています。自分の体調や都合に合った働き方ができるのも魅力です。鮮魚部門では60代が2人、あとは50代で、和気あいあいと楽しく働いています。若い人が入ってくることもありますが、臭いが気になるのか、鮮魚を取扱う部署にはなかなか人が定着しません。かつて店長に包丁の持ち方から教わったように、機会があれば私の経験と技術を次の世代に伝えていかなければといつも思っています。ことから、刺身を切る作業担当の私が休むとほかの人たちに迷惑をかけることになります。体調管理はもちろん、自転車通勤の際にもケガをしないよう心がけています。責任を果たすという意志こそ、日々のモチベーションアップにつながると私は思います。で開かれますが、自己紹介の席で私が「まだ現役で働いています」と発言すると、そこかしこから「がんばれよ」とか「応援するよ」などといった声がかかります。働く場所さえあれば、受け入れてさえもらえれば、多くの人が生涯現役で長く働き続けたいのではないでしょうか。きます。そのためにも健康でいなければと、寝る前に少し身体を動かしています。また、日本茶をよく飲むことも健康維持の秘訣です。くなって10年が経ちました。両親や夫の分まで長生きしなければと思っています。んでしまうマグロだそうです。マグロがマグロをさばいているなんて実に愉快ですよね。最近は鮮魚部門の作業が細分化されている年に一度、能代中学校時代の同窓会が東京シニアパート社員は75歳まで働くことがで私が働くことを応援してくれていた夫が亡娘にいわせれば、私は回遊し続けないと死高齢者に聞く70歳以上のシニアパート社員の定年を75歳ま30年も鮮魚部門にいますから常連のお客さ70歳になったときシニアパート社員と呼称が30年前にパートタイムとして働き始めて、33エルダー

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る