エルダー2020年1月号
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で働き方が変わる高齢者を対象としたシェアリングエコノミーの展開―高齢者から始まる働き方改革―アビーアンドビー「シェアリングエコノミー」とは、個人や団体が所有している場所や物、そして能力を、インターネットを通じて、それを求めている人とマッチングを行い一時的に提供するサービスです。シェアリングエコノミーという言葉自体はあまり馴染みがないかもしれませんが、タクシーの配車や相乗りサービスを提供する「Uウber」や、空いている部屋を観光客などに宿として提供する「Aエirbnb」というサービスは、ニュースなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?日本では「Uber」は白タクにあたり、「Airbnb」は民泊となるため、サービスをそのまま提供するには法律上の問題がありました。法改正するにあたってもそれぞれタクシー業界、ホテル業界を脅かすという世論が強く、限定された利用にとどまっています。「Uber」については、シンガポールでも既存のタクシー業界を脅かすという批判がありましたが、日本とは対照的に「Uber」を利用可能にしてもタクシードライバーは「Uber」のドライバーになるだろうから職を失うのではなく、逆に「Uber」から提供されるマッチング機能に決済機能や評価機能のインフラ※2を利用できるようになることで、利便性はドライバーにとっても旅行者にとっても高まる方向に変わるという判断がなされ、積極的に受け入れられました。「Airbnb」の方は、日本では2018︵平成30︶年に住宅宿泊事業法が制定されたことで、正しく届け出がなされた施設のみが掲載されるようになり、安心して利用できるようになってきています。インバウンド※3観光客の増加による宿泊施設の枯渇と空き家問題も重なって地方創生を助ける手段としても期待されています。企業が成長しているのは、能力のシェアリングの領域になります。特に、「ランサーズ※4」、「クラウドワークス※5」や「ココナラ」と呼ばれるサービスが有名です。これらはシェアリングエコノミーという言葉が広がる以前から、インターネット上でつながることができるたくさんの働き手︵群衆=クラウド︶に、仕事をアウトソーシングする「クラウドソーシング」として広がっていったものです。むしろシェアリング日本において多くのシェアリングエコノミー生涯現役時代を迎え、就業を希望する高齢者は、今後ますます増えていくことが予想されます。そんな高齢者の就業を支援するうえで期待が集まるのが﹁AI・ICT﹂※1。AI・ICTの活用で、高齢者が持つ知識や技術、経験を効果的に活用できる働き方が実現すれば、現役世代の負担軽減につながります。それが、"高齢者から始まる働き方改革"の姿です。東京大学先端科学技術研究センター講師 ーバー  ま 場所や物、能力を共有するシェアリングエコノミー檜ひ山や敦あつし※1 AI・ICT……AI(Artificial Intelligence)は人工知能、ICT(Information and Communication Technology)は情報や通信に関連する科学技術の総称※2 インフラ…… インフラストラクチャの略。「基盤」や「下部構造」の意味を持つ言葉で、道路や水道などの公共・公益的施設・設備をさすほか、IT分野ではシステムを運用するための機材やソフトウェア、通信環境などの総体をさす※3 インバウンド……外国人が旅行などで訪れること※4 ランサーズ……ランサーズ株式会社が運営するクラウドソーシングサービスの一つ2020.138第3回

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