エルダー2020年1月号
41/68

エコノミーは能力のシェアリングであるクラウドソーシングから始まり、その仕組みがさまざまな分野に展開していったことで生まれた言葉ともいえます。前回紹介したGBER※6はこの能力のシェアリングにあたるサービスですが、上記のクラウドソーシングサービスとは異なる点として、インターネット上のオンラインの仕事ではなく、もっぱら地域の現場に出るオンサイトでの仕事を扱っているところが特徴になります。物のシェアリングに関するところでは、「メルカリ」のように使わなくなった物を販売するオンラインのフリーマーケットが有名です。お金を物の一種と考えると、インターネットを通じてたくさんの人から少しずつ目標とするプロジェクトを実現するための資金を集めるクラウドファンディングというサービスもあります。ほとんどのシェアリングエコノミーサービスは、特に高齢者をサービスのにない手として、あるいはサービスの受け手として特別意識したものではありません。高齢者をサービスの受け手とするものには、介護離職ゼロを目ざして、生活に手助けが必要な高齢者世帯の支援サービスを提供している「クラウドケア」があります。まさに介護領域へのシェアリングエコノミーの進出が始まった段階にあります。サービスのにない手としてシニア層をメインターゲットに据えているものはほとんど見られず、GBERだけかもしれません。しかし、シニア層が比較的活躍しやすいシェアリングエコノミーサービスはいろいろあります。短時間でビジネス上の相談に乗るスポットコンサルティングサービスの「ビザスク」は、ほかのクラウドソーシングサービスと比べて経験を積んだ年齢層の登録が多くなっていきます。また、「タスカジ」を始めとする家事支援のクラウドソーシングは、子育てを終えた中高年層が活躍しやすいサービスでしょう。冒頭であげた「Airbnb」も地方の空き家問題とリンクさせていくことで、持ち家のあるシニア層がサービスのにない手として活躍しやすい条件を持っているといえるでしょう。クラウドファンディングについても、社会的価値の高い若者のプロジェクトに寄付をしたり、逆に定年退職後の夢を応援してもらったりすることに活用できるものです。多くのシェアリングエコノミーサービスが高齢者を特別意識していないということは、高齢者もサービスの提供者として参加することを妨げている訳ではないということでもあります。シェアリングエコノミーに参加するにはまず、サービスとして一人ひとりの日常で役立てられそうなものにどのようなものがあるのか情報を得られることが必要です。そして、インターネットやスマートフォンのアプリをインストールしたり、クレジットカード決済の登録を行ったり、サービスの利用画面や使われている言葉が若者向けのデザインでわかりにくかったりするハードルさえ乗り越えれば、だれもがサービスの提供者として参加することができます。で、利用するにはどのようにすればよいのか、実際にサービスに触れて学べる機会があればよいのですが、そのような機会が乏しいのが現状の課題です。東京大学の柏キャンパスで、地域のシニアを集めてシェアリングエコノミーサービスの一つである「ココナラ」の体験ワークショップを開いたことがあります。なことをサービスとして出品し、出品されたサービスを求める利用者からの依頼に応じてインターネット上で売買を行うサイトです。イラシェアリングエコノミーが、どのような概念ココナラは、インターネット上に自分の得意可能性を秘めている高齢者とシェアリングエコノミー高齢者ならではの知識・経験をオンラインサービスに出品※5 クラウドワークス……株式会社クラウドワークスが運営するクラウドソーシングサービスの一つ※6 GBER……就労を希望する高齢者のモザイク型就労を支援するジョブマッチングシステム。詳細は本誌2019年12月号38頁~参照39エルダーで働き方が変わる̶高齢者から始まる働き方改革̶

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る