エルダー2020年1月号
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納豆に含まれる成分を「ムチン」と表記しておりましたが、誤りであることが判明しましたので、お詫びいたします。なお、当該表記につきましては、当時の執筆者の見解であることをお断りいたします。食文化史研究家● 永山久夫2020.156316世界で人気の高い和食ですが、外国人の目には奇異に映るものもあります。そのなかの一つが、「ネバネバ」と糸を引く粘着力の強い食べもの。そのチャンピオンは、何といっても納豆です。スーパーの食品売り場に山積みにされているのを見ても、日本人にとっていかに必要で不可欠な発酵食品であるかがよくわかります。納豆党となると、朝からネバネバと糸を上手に引き出し、ご飯にかけてツルツルと堪能しながらニコニコしています。ユーモラスな作風で有名な俳人の小林一■■茶■(1763■1828)も納豆が大好きで、次のような面白い作品を残しています。「納豆の 糸引張て 遊びけり」たしかに、かき混ぜると、納豆の糸は面白いほど伸びて変化し、指先で遊びたくなります。ネバネバの正体はムチンという粘性物質で、胃壁を保護する役目があるほか、食後の血糖値の上昇を防いだり、動脈硬化や肥満にならないように働く作用が期待されています。注目のナットウキナーゼは、大豆が発酵する過程で生み出される納豆特有の酵素で、血液のサラサラ循環をうながす働きがあり、生活習慣病の予防に力を発揮するそうです。ただ、ナットウキナーゼは酵素ですから熱に弱く、熱々のご飯にかけて食べると、その効果は弱まってしまいます。ごはんは人肌くらいの温度がよいでしょう。「納豆食うひと色白美人」これは昔から東北地方でいわれてきたことわざで、納豆を食べ続けると女性のお肌が自然に美しくなるというもの。納豆に含まれているイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることから、老化を防ぐなど若返りの効果が強く、納豆を食べることで、いつのまにかお肌の色つやがよくなっているということではないでしょうか。「酒は百薬の長、納豆は百肴の王」も、古くからいわれている名言。納豆にはアミノ酸化したタンパク質が多く、味がよいだけでなく悪酔い予防にも役立ちます。冬の酒席では、納豆を一品加えたいものです。納豆の糸は面白い酒は百薬の長、納豆は百■■■肴■■の王FOOD美容効果も期待できる納豆の糸日本史にみる長寿食

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