エルダー2020年2月号
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特集1会社を牽引するベテランプレイヤーエルダー9図表1、2は、職務上の役割の遂行や、同僚を助けるという積極的な行動に対して、「外発的動機」もしくは、「内発的動機」が与える影響を示したグラフです。図表1から、金銭的報酬のために働くという外発的動機は、若手社員に影響を与えるけれども、シニア社員には大きな影響を与えないことがわかります※3。図表2では、仕事の意義や面白さといった内発的動機の持つ影響が示されています。グラフから分かるように、内発的動機はシニア社員の行動をより大きく改善させるのです。シニア社員にとっては、現在行っている仕事に意義や面白さを感じられるような職場であれば、同僚を助けたいと思える職場になります。それに対して、人生がまだ多く残っていると感じる若手社員にとっては、将来の不安を解消させてくれる金銭的な報酬を得られることが、働くうえで重要なのです。これらの結果は、シニア・マネジメント上の重要な示唆を与えてくれます。加齢によって、新しい情報に対して柔軟に対処する能力が低下することが、さまざまな研究を通して明らかになっています。その事実に基づき、シニア社員に単純な仕事を任せてしまう会社がありますが、そのようなやり方はシニア社員の行動を大きく損なわせてしまうでしょう。お金になびかないシニア社員にこそ、意義や面白さを感じられる仕事を任せる必要があるのです。図表3、4は、「上司がどのような行動をとれば、部下であるシニア社員や若手社員が後輩社員の成長をサポートするようになってくれるのか」という問題を分析した結果です。図表3から、上司が部下の感情に配慮するような行動をとらないと、若手社員は後輩をサポートしなくなってしまうことがわかります。しかし上司の配慮的な行動は、シニア社員にとって特に大きな意味を持ちません。図表4からわかるように、シニア社員にとって大きな影響を与える上司の行動は、倫理的・道徳的な行動なのです。一般的に、人は加齢とともに、次の世代に何かを残したいという気持ちが強まるといわれています。しかし残念ながら、すべての会社や職場が、そのような気持ちを満たしたいと思える場になるとはかぎりません。上司が金や名誉のために「人としてのあり様」を無視し、道徳的ではない振舞いをする職場では、次の世代に何※3 グラフ内のシニア社員を示す線が水平に近いということは、横軸(図表1では外発的動機)が増加しても縦軸(業務遂行・周囲への支援)は増加しない、すなわち、横軸の影響が小さいことを意味する。それに対して、若手社員を示す線が右上がりであることは、横軸が増加すると縦軸が増加する、すなわち横軸はポジティブな影響を縦軸に与えることを意味する筆者作成筆者作成図表3 上司の影響(感情的配慮的行動)図表4 上司の影響(倫理的行動)シニア若手後輩社員の育成・サポート上司の行動:感情配慮的行動(心理的な気遣い、相談に乗る など)シニア若手後輩社員の育成・サポート上司の行動:倫理的行動(誠実さ、利益よりも倫理・道徳観を重視 など)

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