エルダー2020年2月号
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特集1会社を牽引するベテランプレイヤーエルダー13いう思いがありました。話しにくい雰囲気ができてしまうと、お互いにとってマイナスです。また、せっかくなので、私の知識や経験を活かしていきたいとも考えました」という。そんな金森さんのフランクな人柄に触れ、若手スタッフも気軽に悩み相談などをするようになった。同社には、社内のコミュニケーションを促進する施策が多い。例えば、月1回、各部署が持ち回りで料理をつくってふるまう「ペンシルキッチン」という企画には、金森さんも気軽に参加し、若いスタッフとコミュニケーションを取っている。また、さまざまなスタッフにインタビューをしてイントラネット※2に載せ、ともに働く仲間のことを知る機会としている。制度面で有益だったのは、自己研けん鑽さんに対して会社が費用を補助する「匠たくみ制度」。挑戦したい資格などを自分で見つけてきて補助を申請できる。社長が率先して自己研鑽に励むので、従業員にも自ら学ぶ風土が浸透している。金森さんは、一昨年、この制度を利用して一般社団法人高齢社会共創センターの「高齢社会エキスパート※3」の認定を得た。「クライアントに提案したことが実現すると、やりがいを感じます」という金森さん。今後の目標は、SFОサービスを事業として拡大していくこと。「経営に貢献するにはまだまだです。少子高齢化によって将来への不安が広がるなか、われわれ高齢者が自ら考え、世の中を少しでもよくしていくことに貢献できればと考えています」と抱負を語る。「いままでの経験を基に、『自分はこうだから』と決めつけて周りに押しつけたり、『年を取っているから仕方ない』と諦あきらめてしまうのは、仕事のうえでもマイナスですし、人生においてもマイナスです。世の中には、やらずにノーという人が多いですが、やってみて分かることもあります。例えばセミナーの講師をすることも、私自身にとってプラスになりました。チャレンジする気持ちを持っていることは、何歳になっても大事です」(金森さん)シニアの採用は会社にもプラス身構えずにやってみる姿勢が大事金森さんが入社したことは、同社にとっても大きなプラスになっている。佐伯室長は「SFОは金森さんなしでは進みませんし、経験を基にした考え方、プレゼンテーション、資料作成など、学ぶところが多いです。クライアントからもお褒めの言葉をいただきます。若いスタッフの質問にも快く対応してくださって、本当にありがたいです」と高く評価している。ちなみに、金森さん以外のシニアも、社会科が専門の元教師や会社経営者など、多彩な人材が揃っている。消費者目線で提案できることが大事なので、パソコンやITの知識・スキルよりも、そのような判断ができる経験をしてきていることを重視して採用しているそうだ。佐伯室長は、「初めてシニアを採用するときには、不安があると思います。私も、うまく馴染めるかな、どんな配慮が必要かなと身構えてしまった部分がありましたが、いざ入社したら、ごく自然に身近な存在になりました。特別な配慮はいらない、むしろ、ほかの人と変わらないように接することが大事だというのが、アクティブシニア採用を行ってみた感想です」と振り返る。同社の安田智とも美み執行役員CCОパフォーマンスマネイジメント部ゼネラルマネージャーも、同じ考えで「多様な人材を活用し組織の成長に結びつけることはむずかしいと思われる企業が多いかもしれませんが、個性を活かし活躍してもらえることが実はたくさんあります。多様な人材を採用することには、メリットしかありません」と語る。企業にとっては、高齢者が働きやすい制度や環境を整備することも大切だが、「まずはやってみる」という姿勢も大事なポイントといえるだろう。※2 イントラネット……インターネット機器などを利用した組織内ネットワークのこと※3 高齢社会エキスパート……(一社)高齢社会共創センターが認定する民間資格。高齢社会を熟知した証や、エキスパート間の交流の一助となるもの

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