エルダー2020年2月号
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特集1会社を牽引するベテランプレイヤーエルダー15るが、サービス業や市役所を定年退職した人など、前職の業種はさまざまだという。電話営業を担当する高齢社員たちは、活力に溢あふれている。契約社員の勤務時間は午前9時から午後5時まで。短時間・短日勤務も可能だが、ほとんどがフルタイムでの就業を希望するという。津田郁夫代表取締役社長は「弊社で働く高齢社員は、とにかく『働きたい』という意欲の塊。営業先リストを片手に、7時間めいっぱい電話をかけて営業しています。なかには電車を乗り換えながら1時間以上かけて通勤する人もおり、私はもちろん、管理職にとっても、働く姿勢を学ばされる存在です」と高齢営業マンたちの意欲と体力に舌を巻く。高齢社員たちが「働く目的」は、生活のためというケースはもちろんあるが、必ずしもそれだけではないという。例えば、「営業職ならではの成果主義にやりがいを感じる」、「聞く、読む、話すことが仕事なため、認知症予防にうってつけ」、「毎日通勤することは健康によい」なども「働く目的」にあがる。しかし、山下部長が特に感じているのは「彼らにとっては、職場こそが自分の居場所であり、会社から期待されていることが原動力になっているように感じます。実際、会社にとって本当に必要な存在ですから」と話す。広告営業という業種で、会社が求めていることは売上げであり、仕事での成果だ。同社は3カ月ごとの業績に基づき時給が変わる「3カ月変動時給制」を導入している。成果を出してくれる人材を年齢に関係なく優遇し、成果が出なければ、給料が減ることもある。現役時代はトップ営業マンだったと意気揚々と入社した人が、電話営業という異なるスタイルの壁に阻はばまれ、結果を出せず辞めていくケースもあるという。しかし、津田社長は「体力的な負荷が少なく、電話で営業を進めるこの仕事は、高齢者に向いていると思います」と話す。成果に基づく70代のトップ営業マンの評価がやりがいに12年前に入社して以来、常に上位の営業成績をキープする影山義昭さん(75歳)は、平均で1日2本程度の広告契約を獲得している。「毎月100万円の売上げを目標にしてやっています。目標に届かない月もありますが」と謙遜するが、取材した11月は年末の需要もあり、すでに目標を大きく上回る実績を上げていた。穏やかな語り口ながら、聞き取りやすいはっきりとした口調で話す影山さんに営業のコツを聞くと、「決定権を持っている“責任者”と話すことが第一です。はじめて電話をかけたときは責任者はまずいませんから、不在だった場合は提案の概要を記した紙をファクスで送っておき、当日中か、遅くとも次の日の朝までにはかけ直して、責任者と話すようにしています。この仕事はナマモノなので、スピードが勝負なのです」と返ってきた。先方からもらう答えはシンプルで、イエスかノー。とにかく責任者と速やかに接触して答えをもらえるように考えて動いている。電話営業ならではの苦労として、「電話応対した人が、責任者まで話を通してくれないことがあります。ここできちんと取り次いでもらえるような工夫が重要です。具体的には契約の決め手なのでここでは明かせません(笑)」と厳しい競争に身を置く営業マンらしい答えが返ってきた。津田郁夫代表取締役社長

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