エルダー2020年2月号
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2020.218企業も労働者も「本気になれ」日本では労働力人口の減少下において、働いている人の5人に1人が60歳以上の高齢社員となっています。100人規模の企業では20人、1000人規模の企業では200人が60歳以上という、高齢社員はこれほど大きな集団になってきたのです。この人たちがサボったら企業はもちませんので、企業経営にとって、このことの重要性はとても大きく、高齢社員の戦力化と活躍は不可欠という状況にあります。組織で働いている人は、少し前までは60歳で定年を迎え、60歳以降は働くにしても引退モード、といった人たちが多くいました。しかしいまは、60歳以降であっても戦力としてしっかり働くことが求められます。個人(労働者)にとっても、状況が変わったわけです。これらのことをまず頭に置いていただきたいと思います。つまり、高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)で希望者全員を65歳まで雇用することが義務づけられているから仕方なく取り組むといった「やらされ感」で高齢者雇用に対応できる時代ではなくなったわけです。企業は本気になってこの問題に向き合わなければなりません。高齢者も労働者として本気になってこのことに向かっていく。このような気持ちや態度がないと、どのような人事管理の施策をつくってもうまく機能しないと思います。賃金は能力や成果に対応して決めるもの現状では、60歳定年が主流となっており、定年以降は再雇用で継続雇用する制度が一般的です。また、多くの場合、60歳前は正社員で、再雇用後は嘱託などの非正社員となり、正社員用の人事管理と、60歳以降の非正社員用の人事管理を共存させる「1国2制度型」の人事管理となっています。定年前と定年後を別扱いにする、というもので、それ自体に問題はないと思いますが、現在の多くのケースでは、〝別扱いの仕方〟に問題があるように見受けられます。多くの企業では、高齢社員に再雇用後、同じ仕事を担当してもらっていますが、職責は落ちています。つまり、会社の期待する役割は変わっています。また、残業や転勤はしなくていいといった、制約的な働き方となっています。一方で処遇の面では、定年到達時の賃金から一律に3〜4割下げて、65歳までそのまま、というような賃金決定が多くみられます。その背景には、それぞれの働きぶりを評価しないという会社が、まだかなりあるという現状があります。「がんばろうが、がんばるまいが、賃金は変わらない」、「よくわからないまま3割、4割下がる」。これでは賃金とはいえません。賃金は、仕事や能力、成果に応じて決めるものです。能力や成果に対する期待が感じられない現状の再高齢社員の人事管理 〜60歳代以降を考える〜学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今いま野の 浩一郎講 演

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