エルダー2020年2月号
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特集2エルダー19人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ雇用制度を、私は「福祉的雇用」といっていますが、これでは高齢者の戦力化は無理でしょう。先ほど話したように、5人に1人が高齢社員の時代です。社員の5人に1人にモチベーションの問題があれば、その影響はほかの社員にも及んでしまいます。高齢社員の二つの特殊性に注目では、高齢社員に活躍してもらう人事管理をどう構築するのか。まず、考慮すべき高齢社員の二つの特殊性に注目します。一つは、定年後65歳まで働くと考えても5年間ですから、「いまある能力をいま活用し、いま払う」という「短期雇用型人材」ととらえること。つまり、長期雇用型人材の定年前社員との違いをふまえた人事管理の構築が必要で、先ほど話をした「1国2制度型」でよいのです。もう一つの注目点は、転勤や残業はせず、短日・短時間勤務を選択するケースも多くなる高齢社員は「制約社員型」である、ということです。子育てや介護と両立させながら働いている社員、病気の治療をしながら働いている社員も制約社員です。現状として、日本では制約社員の比率が増加していますから、その人たちが活躍できる人事管理を構築することが、多くの企業の課題になっています。要するに、高齢社員の人事管理を考えるということを、会社全体の重要課題の一部であるととらえて取り組むことが大事です。再雇用は、雇用契約の「再締結」次に、高齢社員の活用と処遇について話をします。基本となる視点は、定年後の「再雇用」は、定年を契機にした雇用契約の「再締結」ということです。そこでは、企業は「高齢社員から何を買うのか」、高齢社員は「会社に何を売るのか」を明確にして、それらに基づくニーズのすり合わせを通して活用の仕方を決めることが必要となります。基本的なことですが、これがたいへん重要です。現状として、「仕事は会社が用意してくれるもの」、「好きな仕事を続けられるのが当然」といった意識を持っている高齢社員が少なからずいます。しかし、中途採用の面接でそんなことをいう求職者が現れたら、会社は採用しないでしょう。つまり、労働サービスを供給する側の高齢社員のために仕事をつくる「供給サイド型」の施策ではなく、会社の業務上のニーズを満たす人材として再雇用をする「需要サイド型」で雇用契約を再締結するという構えが基本的な考え方として大事になります。処遇については、短期雇用型の特性に対応する「仕事ベースの賃金」が合理的な選択です。また、残業も転勤も日曜出勤もするという無制約的な社員ではなく、高齢社員は制約社員ですから、両者が同じ仕事をしても賃金差をつけることには合理性があるということになります。仕事ベースの賃金とは、例えば、Aランク、Bランク、Cランクの仕事があり、ランク別に賃金が決まっています。ただし、高齢社員は制約社員なので、正社員(=無制約社員)と同じランクの仕事に就いても、制約がある分だけ賃金は下げることになります。下げ方はさまざまですが、この考え方が高齢社員の賃金を合理的に決める基本となります。高齢社員を上手に活用している会社では、たいていこのような考え方を基に制度設計を行っています。キャリアは下がることを意識する変わらなければならないのは、企業の人事管理だけではありません。高齢社員自身にも変わってもらうことが大切です。高齢社員に活躍してもらうための合理的な人事制度が構築できたとしても、定年後の賃金が

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