エルダー2020年2月号
24/68

2020.222当社は、日産車の販売・整備を続けて、2019(平成31)年2月で創立72周年を迎えました。社員数368人のうち、正社員が316人と、正社員が中心の長期雇用を前提としている会社です。企業理念は、近おうみ江商人の心得にならった「社員良し、お客さま良し、会社良し」です。「社員良し」を最初にもってきているところに社長の思いが込められており、また、同様に、お客さまに貢献し、きちんと利益を上げて社会貢献できる会社でありたいといった思いが込められています。本日は、2018年度に実施した定年年齢の引上げについてお話しします。旧制度は、60歳定年退職後再雇用制度でした。しかし、高年齢者雇用安定法の経過措置を利用した制度であることや、基本給は60歳到達時の60%を支給するといった処遇であったこと、また、社員の年齢構成などの課題もあり、社長より今後を見据えた制度改定を2017年度に投げかけられたことが、制度改定の出発点でした。まず、当時の制度の問題点を洗い出すと、年金支給年齢が上がると無年金期間が長期間発生するため、受給開始までの収入が著しく低下することや、管理職の大量定年が控えており、退職されると極めて深刻な人材不足になることなどがあがりました。対応を考えるうちに定年年齢の延長案が浮上したのですが、ノウハウがなかったため、高年齢者雇用アドバイザー※に相談し、以降、他社事例にも学びながら、制度改定を進めてきました。検討段階では、再雇用制度改定案と65歳への定年延長案の2案を並行して検討しましたが、最終的にトップの決断により定年延長をすることに決まりました。定年延長により、正社員として65歳まで働いてもらえること、原則として年齢に関係なく処遇、労務などを取り扱うこととするので、本人のモチベーションを維持しやすい、ということが最大の決め手であったと思います。さらに、退職金は60歳で支給することとして必要な手続きなどを行い、賃金については60歳以降の正社員基本給の取扱いを新設するといった考え方で、60歳到達時に基本給の8割を新基本給とする規程を整備しました。また、旧定年年齢を前提とした個々の人生設計に配慮して、定年年齢の選択制を導入しました。新制度の導入から1年半が経過した現在、設定した定年年齢の上限以下の年齢を選択した者はいまのところいません。ただ、私傷病などが原因で休職や退職した者が数名おり、健康管理に一層のサポートが必要であると感じています。定年延長の取組みについて高齢社員の意欲・活力を引き出すための待遇とは北海道日産自動車株式会社 総務部人事採用・教育グループ 課長代理 石田嗣つぐ武む企業事例発表 2※ 高年齢者雇用アドバイザー…… 高齢者雇用に関する専門知識や経験などを持つ専門家。当機構からの委嘱により、事業主に対し高齢者雇用にかかわる具体的な制度改善提案や相談・援助を行っている定年延長制度の概要● 定年年齢65歳 ➡ 希望者は6カ月前までに申し出ることにより、定年年齢を60~64歳の1歳刻みで選択可能● 退職金は従来通り60歳で精算・支給● 60歳以降の賃金は、60歳到達時の80%を新賃金とする新制度の主な内容北海道会 場

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る